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ドイツ源泉税の免税措置近代化法に基づく税制改正

プライスウォーターハウスクーパース/デュッセルドルフ事務所 シニアマネージャー 石神 則昭
 マネージャー 厚地 崇兵

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1.はじめに

ドイツ連邦参議院は,5月28日に,各種の税制規定の一括改正案である「源泉税免税措置近代化法」を最終的に可決・成立させた。細かい項目も多々あるのであるが,その一括改正法案の中心的テーマは,①アンチ・トリーティショッピング規定の厳格化(源泉税免税・軽減手続きの改正)と②移転価格分野の改正(独立企業価格の確定方法・価格幅ルールの明確化,価格調整条項の改正,事前確認制度の法制化等)である。

前者の アンチ・トリーティショッピング規定の厳格化(源泉税免税・軽減手続きの改正)は,源泉税還付を巡る詐欺事件:Cum-Ex(クム・エクス)スキャンダル(納付してもいない源泉税を税務当局から還付してもらうという詐欺事件)とドイツの源泉税免税・軽減措置規定についての欧州司法裁判所によるEU法抵触判決が直接的な契機となっている。また,移転価格税制分野の改正項目は,当初,BEPS関連の別の一括改正法案に盛り込まれていたものであるが,そちらの審議が長引いていたために,今回の一括改正法案:ドイツ源泉税免税措置近代化法に,今年初めに移行されて審議されていたものである。本稿においては,上記の二つのテーマの改正内...