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[全文公開] domestic news OECD デジタル経済対応課税に136ヶ国・地域が合意,11月末までに第2の柱のモデル規則を開発

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OECDは10月8日,経済のデジタル化に対応するための課税制度として導入が議論されてきた第1の柱(超大規模多国籍企業に係る課税権・利益の再配分),第2の柱(グローバルミニマム課税)について136ヶ国・地域が合意した声明(Statement on a Two-Pillar Solution to Address the Tax Challenges Arising from the Digitalisation of the Economy)を公表した。

今回の声明には,7月の大枠合意には参加せず動向が注目されていたアイルランドなども新たに合意に加わり,参加国はより増加している(ただし,BEPS包摂的枠組み加盟国140カ国のうち,ケニア,ナイジェリア,パキスタン,スリランカは,同声明に参加していない)。

今回公表された声明では,7月の大枠合意から,いくつかの内容がより具体的に示されたほか,今後の実際の制度導入への詳細スケジュールも公表され,今月11月末までに「第2の柱のモデル規則を開発」することなども明記されている。

第1の柱の残余利益の配分割合や,第2の柱の最低税率などを明記

今回公表された声明の多くの部分では,7月大枠合意で示されたものと同様の内容が記載されているが,いくつかの部分についてより具体的な内容が示されている。(※なお,7月の大枠合意の内容については,月刊国際税務10月号「 7月に合意された『OECDデジタル課税・世界最低税率制度』の概要と日本企業への影響 」,各号の「Worldwide Tax Summary」などもご参照下さい。)

例えば,第1の柱の利益A(Amount A)については制度導入開始後,全世界売上200億ユーロ超・利益率10%超の企業について市場国への課税権・利益の再配分が行われることになるが,7月大枠合意では利益率10%超の利益(残余利益)の市場国への配分割合について20~30%としていた。今回の声明で,この残余利益の配分割合を「25%」とすることが示された。(Pillar One「Quantum」)

また,第2の柱についても,IIRやUTPRにおける最低税率について,7月の大枠合意においては少なくとも15%とされていた部分が,今回の声明で「15%」と明記された。(Pillar Two「Minimum rate」)

また,第2の柱では,有形資産の簿価と給与の5%を所得から控除して計算することで最低税率を下回りにくくする「カーブアウト」が設けられるが,制度導入当初は移行期間として,控除できる割合が上記の5%より高く設定されることになる。この移行期間について,今回の声明では「移行期間を10年間とし,導入当初は有形資産の簿価は8%,給与は10%」を控除して計算できることとし,10年間で徐々にその控除割合を減少させていくことが明記されており,7月大枠合意で記載されていた移行期間措置よりも,長期間に亘り,高い割合が設けられることとなった。

また,多国籍企業の収益が1千万ユーロ未満,利益が100万ユーロ未満の法域においては,最低税率課税ルールが除外されることも示されている(Pillar Two「Carve-outs」)

第1・2の柱の導入に向けた詳細スケジュールも公表

また,今回の声明内容では,7月の大枠合意には含められていなかった,第1・2の柱の実際の導入に向けた今後の詳細スケジュールも公開されている。(Annex. Detailed Implementation Plan)

この中で,第2の柱については,まず今月「11月末までにモデル規則等を開発」することが示された。その後,来年の2022年半ばまでに「STTR(租税条約の特典否認)を実装するための多国間条約」,2022年末までに「実装フレームワーク」を開発し,2023年に制度を発効する計画を示している(なお,UTPRについては2024年からの発効が計画されている)。

また,第1の柱の利益Aについては,2022年の初頭に「多国間条約のテキストや,国内法のモデル規則など」を開発,2022年半ばに「多国間条約のハイレベルな調印式」を開催し,こちらも2023年に制度を発効する計画を示している。ただし,第1の柱における利益B(国内の基本的な販売・流通活動に係る独立企業原則に則った一定の利益)については,2022年末までに最終成果物を公表する計画を示している。