※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

裁判例から学ぶ タックス・ヘイブン対策税制への実務対応上の視点〈下〉

大江橋法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士 河野 良介

( 28頁)

本連載の記事を下記よりご覧いただけます。

第1 はじめに

前々号 及び 前号 では,デンソー事件やレンタルオフィス事件といった,タックス・ヘイブン対策税制の適用除外要件の充足性が争点となった納税者勝訴判決から,納税者が実務において武器として活用し得る基準や考え方を抽出し,一定の視点に沿って紹介した。最終回となる本号では,タックス・ヘイブン対策税制に関連する納税者敗訴判決が浮き彫りにした一連の問題意識等を踏まえ,敗訴判決とはいえ今後の実務に発展的に展開する余地のある解釈論や思考法について論じることとする。繰り返しになるが,本号でも,紙幅の関係上,各裁判例の事案内容を詳細に紹介することは割愛し,今後の実務につながる要点に絞って解説する。

第2 納税者敗訴判決から学ぶべき視点

1 グラクソ事件最高裁判決(租税条約適合性)

タックス・ヘイブン対策税制の適用の可否が争われた著名な税務訴訟として,グラクソ事件1が...