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アフターコロナの税務リスク低減策 ~チャレンジ!移転価格税制 特別編~

太陽グラントソントン税理士法人  山田 晴美

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はじめに

コロナ禍が始まって2年,私たちの生活だけでなく,企業を取り巻く環境が一変しました。「痛勤」とまで言われていた通勤をすることがなくなり,戸惑いながら始めたWeb会議も,今では日常の光景となってしまいました。

こうした環境変化の中,昨年秋頃には,日本滞在が183日を超えた出向者に係る源泉徴収や確定申告についてのお問い合わせが多数あり,今まで意識したことのない事例に四苦八苦されている方が多いことを実感しました。それを乗り越えてホッとしたのも束の間,今度は日本滞在が長期化した出向者に係る出向契約の取扱いや,出向者の行う業務に係るIGSの問題も浮上してきました。

昨今はコロナの罹患者も劇的に減り,収束に向かっているのではないかと,ほんの少し気持ちが明るくなっているところですが,ここでいったん,これまでに問題となってきたコロナ禍における税務の課題をまとめておきたいというご要望があり,特別編をお届けすることとなりました。

部長: 最近,ようやくコロナも少し収まってきたようだけど,当社では相変わらずリモートワークを続けている部署が多いようだね。

新二: ボクも週に2日は在宅勤務です。

部長: 杏さんのところは,リモートワークなんてできないから大変だよね。

杏: そうですね。今日はそんなリモートワークをしている企業の部長さんからご質問があって,これからWeb会議なのですが,一緒にお聞きになりますか?

部長: リモートでの相談もあるんだね。是非一緒に参加させていただくよ。

杏: ユリ部長,常連の部長さんと新二さんがいらしているのですが,ご一緒させていただいてもよろしいですか?

ユリ: はい,もちろんです。皆さん,はじめまして。自動車部品製造を行っている会社の国際税務部長をしているユリと申します。今日はよろしくお願いいたします。

部長: こちらこそ,今日は一緒に勉強させていただきます。

杏: ユリさんからは,リモートワークに関する税務全般のご相談があるのですが,まずは出向者に関するお悩みからお聞きしましょうか。

出向者に関する通常時の論点

①給与較差補填

ユリ: 弊社では,コロナ禍により世界各国に出向していた者の80%が日本に戻ってきました。当初はすぐに現地に帰れると思っていたのですが,なかなか現地に入国することが難しく,昨年日本滞在が183日を超えてしまった時期は,どの企業もその対処に追われていたと思います。

部長:当社もまっ...