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[全文公開] Amount A(利益A)

佐和公認会計士事務所  佐和 周

( 25頁)

本連載は,国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものですが,今回はデジタル課税等に係る新しい国際課税ルールに関連する用語です。

Amount A は「利益A」と訳されますが,ここでの amount 自体は「額」( a quantity of money )という意味です。では,なぜこれが「利益」と訳されるのでしょうか?

前提として,この用語は OECD (経済協力開発機構)が公表した Statement on a Two-Pillar Solution to Address the Tax Challenges Arising from the Digitalisation of the Economy (経済のデジタル化から生じる税務上の課題に対処するための2つの柱の解決策に関する声明)の第1の柱( Pillar One )に関連する用語です。

そして,この第1の柱は,端的には,デジタル企業を含む一定の多国籍企業( MNEs:multinational enterprises )に関して,物理的拠点の有無にかかわらず,一定の利益(言い換えると,それに対する課税権)を市場国に対して再配分するものです。 Amount A が「利益A」と訳されるのは,それが一定の残余利益( residual profit )を意味し,この再配分の対象になるものだからです。

なお,具体的には,対象となる多国籍企業に関して,その利益のうち,「収益( revenue )の10%を超える部分」が残余利益とされ,その残余利益の25%が市場国に配分されることになります。

編集部より

本欄ご担当の佐和周先生には,国際税務入門者向けの解説 『新任社員のための国際税務の仕組みとポイント』 (本誌109頁)をご執筆いただいています。

第1回 国際税務とは (2020年1月号)
第45回  外国税額控除制度
第8~12回 移転価格税制
第1415回  タックス・ヘイブン対策税制

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