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TP Controversy Report〈52〉 AOAと文書化

EY税理士法人  竹内 茂樹
EY税理士法人  野々村 昌樹

( 85頁)

1 AOA文書化の背景/本稿の目指すところ

2010年にOECDは,従来のモデル租税条約7条(以下「旧7条」)でも帰属主義を原則としていたものの,その解釈や運用が各国で統一されていなかったため,結果として二重課税・二重非課税を効果的に排除することができていないという問題提起を受け,①PEの果たす機能及び事実関係に基づいて,外部取引,資産,リスク,資本をPEに帰属させ,②PEと本店等との内部取引を認識し,③その内部取引が独立企業間価格で行われたものとして,PE帰属所得を算定するAOAアプローチ(Authorized OECD Approach)に基づく新モデル条約7条(以下「新7条」)が導入されました

その後,我が国では,この機をとらえ,平成26年度税制改正(2014年)で,国内法を従来の総合主義から帰属主義に転換するとともに,その帰属所得の計算につきAOAアプローチを採用することとしました。あわせて,旧7条締結国との間で新7条を導入していくことにより,条約締結国と我が国のPE帰属所得の認識が一致し,また,旧7条締結国との間でも,旧7条で容認された範囲の内部取引の認識が一致することとなり...