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■新春特別寄稿 『国際課税ルールに関する新たな合意について』

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財務省主税局
国際租税総括官
武藤 功哉

1.背景

2021年10月8日に,OECD/G20のBEPS包摂的枠組み(Inclusive Framework on BEPS(以下「IF」と略))において,国際課税ルールに関する新たな合意が136ヶ国・地域の賛同を得て成立した。経済のデジタル化に伴う課税上の課題に関する2つの柱からなる新たな解決策は,第一次世界大戦後に国際連盟において策定された国際課税のルールを抜本的に見直すものであり,100年ぶりの改革というべき歴史的な成果である。

今回の合意の背景には,現行の国際課税ルールにおいて,域内に支店・子会社等の拠点を設置している外国企業に対してしか課税できない(「PEなければ課税なし」)という原則が,急速に進展する経済のデジタル化に対応できなくなっているという問題意識があった。

2008年の世界経済危機をきっかけに,多国籍企業による租税回避行為に対する懸念・批判が強まり,G20からの要請に基づきOECDが2013年7月に,「BEPS行動計画」を公表した。この行動計画の「行動1」においてデジタル経済下における課税上の課題に取り組むべきことが盛り込まれ,OECDの租税委員会の下に設置されたデジタル経済タスクフォース(TFDE)において,OECD/G20非加盟国も参加して検討が開始された。その後,2015年に公表されたBEPS行動1報告書において,国境を越える取引に関する付加価値税(消費税)の徴収については一定の方向性が示されたものの,法人税については,継続検討とされ,2016年に大幅に参加国を拡大したIFにおいて検討が続けられることとなった。

2.青写...