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国際税務の相談室☆事前確認 東南アジアに所在する国外関連者との取引に係る事前確認(APA)申出について

税理士法人フェアコンサルティング  萩谷 忠

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Q

当社は測定機器用電子部品の開発及び製造をしています。シンガポール,インドネシア及びベトナムに製造子会社があり,それぞれ日系電機メーカーの現地子会社に電子部品を販売しています。

各製造子会社は現地で原材料や部品等を調達し,当社が開発設計した図面や製造工程に基づき,電子部品を製造しています。また,各製造子会社の電子部品の販売は,あらかじめ当社と日系電機メーカーとの間で決定した取引諸条件に基づき行っています。

当社と各製造子会社との取引に係る独立企業間価格は,各製造子会社を検証対象とする取引単位営業利益法(指標は売上高営業利益率)で算定することとしており,その適正営業利益率は各社とも8%です。

当社と各製造子会社との間では棚卸資産取引はないため,当社は各製造子会社と技術供与契約を締結し,当社が開発した電子部品に係る無形資産使用の対価として,各製造子会社からその売上高の5%のロイヤルティを徴収しています。各製造子会社の売上高営業利益率はロイヤルティ徴収後でも18%程度と高水準で,適正営業利益率を超えていることから,当社に対する法人税調査において,国外関連者に対する所得移転を指摘される可能性が高いと考えています。ロイヤルティ料率を15%程度に引き上げれば,各製造子会社の売上高営業利益率は8%程度となり,適正営業利益率となりますが,このような高い料率のロイヤルティは,例えロイヤルティ支払後の各製造子会社の営業利益率が適正利益率になるとしても,各製造子会社の所在地国の税務当局からその料率の高さを指摘され,移転価格課税が行われる可能性が高いとも聞いています。

そこで,各製造子会社との取引に関し,バイラテラルAPA(相互協議を伴う事前確認)の申出を行うことを検討していますが,何か注意する点はあるでしょうか。

A

各製造子会社の所在地国のバイラテラルAPAの実施状況を踏まえて,検討されるのが良いでしょう...