※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

移転価格税制についての素朴な疑問④ 国税庁は移転価格課税と寄附金課税をどのように区別しているか(2)

外国法共同事業 ジョーンズ・デイ法律事務所 弁護士 井上 康一

( 48頁)

Ⅲ 国税庁の見解の整理

1 問題の所在

関連条文を一体的に文理解釈すると,無償行為の場合の寄附金について規定する 法人税法37条 7項のみならず,いわゆる低額譲渡を含む対価取引における寄附金につき規定する 同条 8項も, 租税特別措置法66条の4 第3項の対象となると解するのが自然である。

したがって,例えば,内国法人が国外関連者に対し資産の譲渡をした場合に,その譲渡対価の額が当該資産の譲渡時の時価に比して低いときには,当該対価の額と当該時価との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は,当該内国法人の寄附金の額に含まれると解するのがむしろ関連条文の文理に沿う。実際,次に述べる移転価格事務運営指針3—20において,国税庁は,そのような見解に立つことを明らかにしている。

以下,移転価格事務運営指針3—20及びその例示としての移転価格参考事例集の事例28を詳細に検討することにより,国税庁が国外関連取引に関し,移転価格課税と寄附金課税の適用関係をどのように区別していると考えられるかを説明する。

2 国税庁の見解

(1)移転価格事務運営指針3—20と事例28の概要

(a)平成20(2008)年改正

国税...