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TP Controversy Report〈54〉 バーチャル組織における重要な無形資産の構築と帰属利益の考え方

EY税理士法人  高垣 勝彦
EY税理士法人  梅本 祥弘

( 120頁)

1 はじめに

従来,多くの企業では,研究開発等の重要な意思決定やリスク管理等を親会社が行い,子会社は親会社の決定した方針にしたがって与えられた権限の範囲内で進出地域において事業展開を行うといった役割分担で事業展開しているケースが一般的でした。しかしながら,近年,組織の国際化,経営資源の有効活用,人材確保等の観点から,単一法人(主として親会社や地域統括会社等)の一部門として設置される意思決定機関ではなく,複数関連者の従業員から構成される組織横断的な意思決定機関(以下,これらの意思決定機関を本稿では「バーチャル組織」といいます。)を設定し,重要な意思決定やリスク管理等を行うケースが増えています。特に,COVID-19の影響で従業員の異動(帰国)や移動制限により,この傾向が拡大しているものと考えます。

上記の結果として,これまでの単一の法人(親会社や地域統括会社等)が無形資産形成等に係る重要な意思決定やリスク管理を行い,無形資産を経済的に所有し,超過収益を収受する一方で,その他の関連者は当該法人から当該無形資産の供与を受け事業活動を行い,ルーティン利益を稼得する,という従来モデルでは整理・説明が困難な事象が生じているものと理解しています。本稿では,当該バーチャル組織における無形資産に係る諸問題とその対応について,移転価格税制の観点から概観したいと思います。

なお,本稿における見解・意見について...