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[全文公開] 最近のニュース・トピックスを通して学ぶ 租税条約の理論と実際〈24〉今後の租税条約の方向性

国際課税研究所 首席研究員 矢内 一好

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1 日本の租税条約網の動向と課題

(1)アフリカ諸国との租税条約

南米諸国との租税条約網が拡充する一方,アフリカ諸国との租税条約は,エジプト,南アフリカ,ザンビアの3か国で,モロッコとは令和2年1月に署名,交渉中の国は,チュニジア,ナイジェリアです。

これに対して,アフリカと経済協力を進めている中国の場合,スーダン(1990年),エジプト(1997年),南アフリカ(2000年),ナイジェリア(2002年),チュニジア(2002年),モロッコ(2002年),エチオピア(2009年),ウガンダ(2012年),ボツワナ(2012年),ジンバブエ(2015年),ケニア(2017年),ガボン(2018年),コンゴ共和国(2018年),アンゴラ(2018年)の14か国(2019年末)とそれぞれ署名しています。

アフリカ諸国との経済的関係は,旧宗主国である英,仏等の国が多くの租税条約を締結しています。英国の場合は,アルジェリア,ボツワナ,コートジボワール,エジプト,エスワティニ(旧スワジランド),エチオピア,ガンビア,ガーナ,ケニア,レソト,リビア,モロッコ,ナミビア,ナイジェリア,セネガル,南アフリカ,スーダン,チュニジア,ウガンダ,ザンビアの計20か国(2019年末現在)です。フランスは,旧植民地であったブルキナファソ,カメルーン,中央アフリカ,コンゴ,ガボン,ギニア,モロッコ,ナイジェリア,トーゴ等との租税条約があります。

(2)アジア諸国との租税条約

アジア諸国との租税条約では,日本はモンゴル,カンボジア,ラオス,ミャンマーとの租税条約が締結されていません。最近では,中国から移転する企業の受け皿として,ベトナム,カンボジア,ラオス,ミャンマー等が注目されています。

新規の租税条約ではありませんが,締結以来,一度も改正されていない日中租税条約の動向が注目されるところです。経済力の上昇に比して,中国の締結している租税条約の投資所得に対する限度税率が高く,限度税率引下げの方針変更が行われるのかどうかが注目されるところです。

(3)日米租税条約

令和元年8月30日に東京において日米租税条約の改正議定書(以下「改正日米条約」とします。)発効の批准書の交換が行われ,改正日米条約は,この批准書の交換の日に発効しました。日米租税条約は,日本の一番古い租税条約であると共に,両国間の経済交流等の観点からその重要性は高いものがあります。これまで,日米租税条約は,原条約(昭和29年署名),第2次条約(昭和46年署名),第3次条約(平成15年署名)と変遷し,今回発効した改正日米条約とは,第3次条約の一部を改正した議定書のことで,平成25年1月に署名がされ,米国側の国内手続きが完了しないことから塩漬け状態で発効まで約6年間放置された状態でした。

この6年間に租税条約は進展していることから,改正日米租税条約の改正が行われるのかという点です。次項で述べるBEPS多国間条約に米国は参加していないことから,日米租税条約は,BEPS多国間条約の適用範囲から外れたある種の「真空地帯」に存在する条約ということになり,日米租税条約が他のBEPS多国間条約の適用となる条約よりも,納税者有利な状況を生み出す可能性があります。

2 BEPS多国間条約の今後

BEPS多国間条約における問題点の1つは,米国がこの条約に参加していないことです。BEPS多国間条約は,BEPS行動計画の勧告を取り入れて租税回避対策を強化していることから,BEPS多国間条約の適用外の日米租税条約は,その適用を受ける企業等にとっては有利ということになります。特に,日米双方共に,国内法において租税回避対策の法改正を行っていることから,租税条約優先適用ということで,非居住者である外国法人等にとって,国内法の課税強化を回避できる可能性があるからです。

また,BEPS多国間条約を検討する場合,単に,日本と適用対象国との適用関係以外に,内国法人等の関係会社が海外を拠点に事業展開しているケースもあります。その場合は,海外拠点国を基点としてその国が締結している租税条約ネットワークのうち,適用対象国,適用対象条項の確認等を行い,海外拠点国の既存の租税条約の適用関係をチェックする必要があります。

さらに,異なる視点として,BEPS多国間条約には多くの軽課税国等(タックスヘイブン)が参加しています。OECDとしては,BEPS多国間条約の適用範囲を広げて,租税回避の抜け道をふさぐ趣旨と理解できますが,くだけた言い方をすれば,BEPS多国間条約の適用に「熱心な国」と「義理で参加している国等」があるという印象です。この区分によれば,上述の軽課税国等は,「義理で参加している国等」に区分されます。では,仮に,参加しなかった場合はどうなるのかということですが,参加せずに租税回避等に利用される事態に至った場合,G20の国等から厳しい租税回避規制が行われることになります。「義理で参加」の意味は,このような先進諸国によるバッシングを防ぐ狙いがあるものと思われます。

3 国際的租税回避が減らない理由

(1)OECDによるデジタル課税の動向

OECDが2019(令和元)年5月31日に公表した「経済の電子化に伴う課税上の課題に対するコンセンサスに基づく解決策の策定に向けた作業計画」(Programme of Work to Develop a Consensus Solution to the Tax Challenges Arising from the Digitalisation of the Economy:以下「作業計画」という。)が2019年6月に福岡において開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議において承認されたことで,デジタル課税の今後の方向性が定まったといえます。その後作業計画で確立した,いわゆる2本柱について,詰めた検討が行われました。この2本柱の第1の柱は,2019年末から「統一アプローチ」として検討が詰めれらています。

この背景には,世界的なIT企業であるGAFA等が,所得の発生した場所において適正な納税をしてこなかった事実が明らかになり,これらの市場国における税収減の他に,一部の企業による租税回避が税負担の公平性を著しく損ねていること等が問題視されたのです。

しかし,このような事態を招いた原因の1つは,現行の国際課税の原則,ルール等がこれらの企業に適正な課税をすることができないという欠陥と各国税制度の相違並びに自国の税収を犠牲にして外国からの投資を促進しようとする,いわゆる「抜け駆け」をする国等が出現するという各国の利害の対立に基因しているということです。税務において,税法等の制度と税務調査等の執行という2つの側面がありますが,この問題は,その多くが前者の制度(国際税務及び国内法)の欠陥に基因する問題といえます。

デジタル課税については,2021年4月以降の米国が提唱した最低税率15%をOECDが受け入れて,7月に大枠合意,10月に最終合意となりました。OECDは,2021年12月20日,以下の「第2の柱に関するモデルルール」等を公表しました。

①モデルルール(TAX CHALLENGES ARISING FROM THE DIGITALISATION OF THE ECONOMY - GLOBAL ANTI-BASE EROSION MODEL RULES(PILLAR TWO))

②FAQ

途上国の税制にある租税優遇措置,経済特区における課税の減免等については,今後検討を要する項目もありますが,OECDは2023年の実施を目指しています。

このような動きに対して,令和元年12月に,アマゾンが日本国内の販売額を日本法人の売上高に計上する方針に転換し,2017年と18年12月期の2年間で計300億円弱の法人税を納付していたことが報道されました。これまで,租税条約等の適用を利用して,日本における納税を回避してきた同社が方針変更をした背景には何があるのかは不透明です。

(2)EUの動向

EUは,OECDの動向とは別に,独自路線で租税回避対策を行っています。

2016年7月12日に租税回避対策指令(Anti-Tax Avoidance Directive:ATAD)がEU理事会で採択されています。その内容は以下のとおりです。

①利子損金算入制限ルール(Interest limitation rules)

②出国課税ルール(Exit taxation rules)

③一般的租税回避ルール(General anti-abuse rule)

④外国子会社合算税制(CFC:Controlled foreign company rules)

⑤ハイブリット・ミスマッチ(Rules on hybrid mismatches)

上記②,③はBEPS行動計画に含まれていません。2018年12月31日が上記②を除く租税回避対策指令の国内法整備の期限となっています。2019年12月31日が上記②の国内法整備期限です。特に上記③は,一般否認規定をEU指令により,加盟国各国が国内法として規定することになります。

(3)金融口座情報自動的交換報告制度

平成30年から日本も実施している金融口座情報自動的交換報告制度(Automatic Exchange of Financial Account Information:以下「AEOI」とします。)は,自国の金融機関にある非居住者の金融口座情報を非居住者の居住地国と交換する制度です。その目的は,脱税及び租税回避の防止であり,OECDにより進められてきました。AEOIの執行については,OECDが定めた共通報告基準(Common Reporting Standard:以下「CRS」とします。)に基づいて行われています。

日本は,平成27年度税制改正において,AEOI執行に向けて,「租税条約等の実施に伴う所得税法,法人税法及び地方税法の特例等に関する法律」,同施行令,同省令を改正しました。AEOIは通常の租税条約に基づく情報交換ではなく,税務行政執行共助条約第6条を根拠とする各国の権限のある当局による合意という行政協定です。

(4)米国のAEOI不参加

米国はAEOI不参加です。その理由は,FATCAという法律の存在です。FATCAは,2010年3月18日にオバマ大統領の署名により成立した法案(H.R.2847:the Hiring Incentives to Restore Employment Act)の一部である「外国口座税務コンプライアンス法(Foreign Account Tax Compliance Act:略称FATCA)」のことで,外国金融機関(FFI: Foreign Financial Institutions)に対して米国人等の口座情報を米国財務省に報告することを要求する内容となっています。外国金融機関がこの報告を行わない場合,当該金融機関に対して所定の米国国内源泉所得に30%の源泉徴収が課されることになります。

(5)FATCA政府間モデル協定

平成24年6月の日米の共同声明の約1か月後,米国FATCA規制遵守のための政府間モデル協定又は政府間協定(IGA)を公表しました。

このモデル協定には,相互協定(Reciprocal versionと非相互協定(Non-reciprocal version)の選択できるモデル1協定と,非相互協定となるモデル2協定があります。日本は,共同声明にあるように,法的制約のために,FATCA上の報告,源泉徴収及び口座閉鎖を必ずしも全て履行することができないことから,モデル2協定です。FATCAの実施に関して欧州を中心とした多くの国が採用したのは,モデル1協定であり,この協定の場合は,米国からの情報提供を受けられる場合と,受けられない場合の選択できますが,日本が選択しているモデル2協定の場合,米国からの日本居住者に関する口座情報の提供は日米租税条約に基づき収集し交換することにより,進んで日本と協力するということで,相互協定ではありません。

以上のことを勘案すると,日米間では,AEOI不適用という情報収集の空白に相当する部分についてFATCAに基づいて米国から情報が来るという確証はありません。

(6)今後の見通し

国際的租税回避対策は,上記のように進展していることは事実ですが,タックスヘイブンが存続し,BEPS多国間条約にタックスヘイブンが多く参加し,タックスヘイブン間の租税条約が締結されている現状は,国際的租税回避問題の氷山の一角というべき事項で,各国税制の相違,租税条約ネットワークの不正利用等が今後根絶されるという予測はできません。むしろ,環境が厳しくなった分,手の込んだ租税回避が行われる可能性が増加するとみるべきです。

4 タックスヘイブンは消滅か?

(1)タックスヘイブンが直面した3つの危機

税金のない,あるいは税負担の軽い国又は地域をタックスヘイブン(軽課税国等)といい,国際税務の領域では,論議される機会の多い項目です。数年前には,タックスヘイブンへの投資のコンサルティングをしていた法律事務所等から顧客情報が流出して問題となった「パナマ文書」あるいは「パラダイス文書」が報道されて注目を集めたことがあります。

タックスヘイブンの多くは,英国,オランダ等の海外領土あるいはそれから独立した国等ですが,これらの国等は課税に関する自治権を有していることから,先進諸国はこれまで各種の圧力をかけてきましたが,次第に,タックスヘイブンの権益は縮小しているといえます。

標題にある3つの危機とは,その権益縮小の過程で,第1は1996年から2001年の間にOECDが進めた「有害な税競争」への規制です。第2は2012年以降,これもOECDが主導している租税回避防止のための「BEPS行動計画」です。第3は大手IT企業等による租税回避を防止するために,2021年末に「デジタル課税」に一定の方向性が(ミニマム税の課税)示されたことです。いずれもタックスヘイブンにとっては,その存亡にかかわる事項です。

(2)「有害な税競争」への対策

OECDが進めた「有害な税競争」規制に関する主要なテーマは2つです。1つは先進諸国における租税優遇措置の廃止等であり,輸出促進のための措置等がその対象となりました。第2はタックスヘイブンに対する情報開示です。この活動以前では,タックスヘイブンは税務関連情報を法律により保護して開示しないという状況でした。

このOECDの対タックスヘイブン対策の先例となったのが,米国の情報交換協定です。米国はカリブ海に点在するタックスヘイブンと隣接していることから,1984年のバルバドスとの協定以降,近隣のこれらの国等と情報交換協定を締結・整備してきました。

OECDはリストを作成して,そのリストにあるタックスヘイブンに情報開示をするように勧告したことで,多くのタックスヘイブンがこれに従いました。日本は2010年(平成22年)2月署名のバミューダ租税協定(2010年8月発効)以降,主要なタックスヘイブンとは,情報交換協定を整備しています。

(3)BEPS行動計画への対策

「BEPS行動計画」の項目15が,BEPS多国間条約で,各国が締結している租税条約における租税回避関連条項のレベルアップを図ることを目的としています。

このBEP多国間条約には多くのタックスヘイブンといわれる国等が参加しています。例えば,英国王室属領のマン島,ガーンジー島,ジャージー島がこれに該当しますが,これらの国等が参加する理由としては,第1に,BEP条約による強制の範囲を狭めて多くの国等が参加できる環境をOECDが整えたこと,第2に,タックスヘイブンが,「BEPS行動計画」従わない選択をした場合の先進諸国からの税制等の締め付けを回避する意図があるものと思われます。

このように,タックスヘイブンは先進諸国の要請に従うという譲歩を重ねながら,税制における既得権ともいうべきタックスヘイブンの利点を守っているといえます。

(4)「デジタル課税」導入の影響

すでに述べたように,2021年末に,OECDは大手IT企業等による租税回避を防止するために,具体的な「デジタル課税」導入の方向性を打ち出しました。

その1つがミニマム税制度の導入です。この制度は一定の税率以下の課税を受けている外国子会社等(以下,「CFC」)の所得を株主である親会社等の所得に合算して課税するというものです。

これに類似する方式として,米国財務省は2018年9月に2017年末の改正法(The Tax Cuts and Jobs Act:TCJA)で新規導入された「米国外軽課税無形資産所得(Global Intangible Low-Taxed Income,以下,「GILTI」)合算課税」に関する財務省規則草案(Proposed Regulations)を公表しています。このGILTI合算課税は,外国子会社が認識する課税所得を,配当の有無にかかわらず,毎期米国株主側で合算課税するという全く新しい概念のクロスボーダー課税です。

このようにタックスヘイブンを巡る外圧は次第にその力を強めています。では,今後もタックスヘイブンへの圧力を強めて最終的には,タックスヘイブンを廃止することは可能かどうかという問題に行き着くことになります。少し古い資料ですが,OECDが調査したオフショア・フィナンシャル・センターの規模では,最小金額のIMFが1.7兆ドル(2000年),最高額がTax Justice Networkによる11.5兆ドル(2005年)となっています。この多くがタックスヘイブンに所在しているという現実を目の当たりにすれば,タックスヘイブンの廃止ということは軽々にいえるものではありません。また,仮にG20における結論として,タックスヘイブンの廃止の方向性が打ち出されたとしても,その見返りとしての補償問題等が生じることも想定できます。しかし,いずれにせよ,タックスヘイブンにとっては,今後も先進諸国との調整局面が継続することになります。

(5)ミニマム税問題

タックスヘイブンに子会社等を設立して利益移転を図った場合,現行では,タックスヘイブン税制(外国子会社合算税制:以下「合算税制」とします。)が原則として適用となります。例えば,親会社所在地国の税率が30%として,子会社所在地国の税率が10%の場合,最低税率の適用があるとすると,子会社の所得は親会社の所得に合算して課税されることになります。また,「ミニマム税」以外にタックスヘイブンに所在する国外関連者に対する支払いが租税回避の効果を持つ場合,その支払の損金算入が否認されるルールも検討されています。この損金不算入とする方法は,これまで「有害な税競争」あるいは初期のG20における租税回避防止の方法として検討されたものですが,ミニマム税はこれまで公に検討対象となったことがありません。

(6)合算税制への影響

合算税制は,基本的にタックスヘイブン等の軽課税国等を利用した租税回避を防止するために創設された制度です。この合算税制は,課税する国の税法の域外適用ではないかという疑義が提示されたこともありますが,あくまでも課税する国の法の適用であり,課税国の税法が,他国の企業の課税に影響するものではないと理解されてきました。

日本の場合,合算税制の適用除外となっている国外関連者の多くは,香港(法人税率16%),シンガポール(法人税率16.5%)に所在するといわれています。結果として,これらの国等に所在する国外関連者の多くは,適用除外の規定を利用して合算税制の適用を受けていません。日本の事情としては,最低税率を15%以下とするのかどうかが判断するポイントとなるでしょう。したがって,仮に,10%程度が最低税率となるのであれば,典型的な軽課税国である,ケイマン,バミューダ,英領バージン諸島等は課税対象となりますが,それ以外は合算税制の適用となり,最低税率の適用が合算税制よりも優先して適用となるような規定が必要になります。結果として,金融関連の業種等が影響を受ける可能性が生じます。

(7)コーポレート・インバーション等の 可能性

先進国の法人税率が30%で,ミニマム税を10%とした場合,上記で述べたように,軽課税国等がその適用となりますが,軽課税国に親会社を置き,先進諸国に子会社がある場合は,ミニマム税の適用を免れる可能性があります。このように親会社と子会社の位置を入れ替えることは,株式交換等を利用することで可能となります。

これをインバーション取引といいますが,この場合,軽課税国等の法人の株主は,先進国に所在することになることから,その株主の所得と合算して課税するかどうかの検討を要することになります。

(8)移転価格税制との関連

移転価格税制は,国外関連者との所得の配分問題が焦点です。例えば,仕入➡親会社➡外国子会社➡売上,という取引であれば,売上と仕入の金額の差額が,親会社と外国子会社の利益の総計ということになります。移転価格税制は,この利益の総計を親会社と外国子会社でどのように分けるのかという問題であり,そこに独立企業間価格という概念が登場するのです。

したがって,軽課税国等の適用除外を防止するという移転価格税制の効果は減少することになります。

(9)過大支払利子税制との関連

過大支払利子税制は,平成24年度の税制改正により創設され平成25年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。

日本は,BEPS行動計画の勧告を受け入れて,平成31年度税制改正では,①対象となる支払利子等の範囲の拡大,②損金算入限度額の割合の引下げ,③適用除外の拡大を行っています。

本税制の適用に関して説明しますと,内国法人が低税率国に所在する関連者(直接・間接の持分割合50%以上の親会社・子会社等)から借入れを行い,当該関連者に利子を支払うと,内国法人は支払利子を損金として課税所得が減少し,利子を受領した関連者は低税率であることから,グループ全体の税負担は減少することになります。最低税率の基準にもよりますが,この税制においても,最低税率との併用問題が生じることになります。

(参考) 租税条約では,日本の条約相手国が日本以外のどの国と租税条約を締結しているのかという視点も必要です。この点については,会員限定サイトの拙稿「条約相手国の租税条約網」をご覧下さい。

編集部より

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