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TP Controversy Report〈55〉 第三者への無形資産売却に伴う関連者間での対価の配分

EY税理士法人  高垣 勝彦
EY税理士法人  Jonathan David Perry
EY税理士法人  中山 景介

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1 はじめに

近年,コロナ禍を契機にしたキャッシュニーズの高まり,経営資源の選択と集中を理由に,多国籍企業による不採算事業及びノンコア事業の売却が増加しています。第三者への事業売却の場合,当該売却価格は当事者と第三者との交渉により決定される独立企業間価格のため,移転価格の観点から問題になることは基本的にはありません。ただ,当事者の国外関連者も関与する事業を第三者へ売却する場合には,当事者から関連する国外関連者に対して,第三者から得る売却対価の一部を独立企業原則に基づく補償・配分として支払うことが必要となることがあります。

今回は,当事者の国外関連者も関与する事業を第三者へ売却する際の当事者と国外関連者との間での対価の配分について,特定の製品に係る権利(特許,商標,契約上の開発権,製造権及び販売権など)の第三者への売却を対象に,対価の配分に係る検討プロセス及び主要事例を説明します。

2 当事者と国外関連者との間での対価の配分に係る検討プロセス

当事者の国外関連者も関与する事業を第三者へ売却する際の検討プロセスは,以下のとおりとなります。本邦移転価格税制において,事業再編に係るルールは具体的に定め...