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国際税務研究 グループ法人の中に実質支配関係にあるタックス・ヘイブン法人がいる場合の完全支配関係法人の判定

青山学院大学 名誉教授 渡辺 淑夫

( 102頁)

設例

 内国法人であるA社は,その傘下のグループ法人として国内及び国外にかなりの数の子会社,孫会社等を擁しているが,これらのA社グループ法人の1つに,いわゆるタックス・ヘイブン国の法人で,主として社債発行を通じて調達した資金を原資として専らA社グループの法人に対する金銭の貸付け又は増資新株の引受け及びその保有を通じて資金供給を行うグループ内金融をその主たる事業としているもの(以下「B社」という。)がある。

B社の発行済株式の総数のうち,その51%はA社をはじめとするA社グループの主要数社(A社以外はいずれも外国法人)が保有し,残り49%は,A社グループと親密な取引関係にあるグループ外の外国法人その他の第三者が保有するところとなっているが,タックス・ヘイブン法人の特徴として,その資本金額及び1株当たりの発行価額はいずれもごく少額なものであり,各株主の持株割合も全く名目的(ノミナル)なものであって,現実にはB社に対する配当請求権はもとより,残余財産請求権もすべてA社に帰属し,事実上,B社はA社の完全子会社であって,その実質的な支配関係はA社に属するものであることが,B社の株主全体の了解事項と...