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NEW ケース・スタディ 税制適格ストックオプションを受けた居住者の国外移住

 弁護士 南 繁樹

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設例

Xは,2010年に設立された内国法人甲社の創業メンバーに誘われ,創業間もない時期から営業部長を務めていました(ただし,取締役ではありません。)。Xは,2012年に甲社からいわゆる税制適格ストックオプションの要件を満たす新株予約権を無償で付与されました。2015年に甲社株式が上場し,Xは新株予約権の発行要項に従い同年に権利行使し,甲社株式を取得しました。取得された甲社株式は,甲社と国内乙証券会社との間のストックオプションの管理に関する契約に基づき,乙証券会社の株式保護預り口座において保護預りとされました。Xは甲社株式を売却せずにそのまま保有していました。その後,Xは甲社を退職し,2020年1月に米国に移住し,同所に住所を移転し日本の非居住者となりました。Xは既に退職していたため,米国で甲社のために役務提供を行ったことはありません。その後もXは甲社株式を譲渡する意図はありませんでしたが,乙証券会社は非居住者の口座を取り扱っていないことから,甲社株式は丙証券会社の非居住者用口座に移管されました。なお,Xが所有している有価証券などの金融資産の時価は,甲社株式を含めて合計1億円未満ですので,...