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[全文公開] domestic news 国税庁 「金融取引」、「費用分担契約」に係る移転価格事務運営要領を改正

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国税庁は6月10日付で、 「『移転価格事務運営要領』の一部改正について(事務運営指針)」(査調12-100ほか3課共同) を公表した。

この改正はOECD移転価格ガイドラインの改訂等を踏まえたもので、「金融取引」と「費用分担契約」に関する移転価格税制上の取扱いについて、指針の内容を一部改正している。また、「別冊 移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」においても、「金銭の貸借取引」に係る事例の見直し、「債務保証」、「キャッシュ・プーリング」に係る事例の追加が行われている。

事務運営指針・参考事例集の改正は、「令和4年7月1日以後に開始する事業年度分の法人税の調査等から適用」され、同日前に開始された事業年度分の法人税調査等については、従前の内容が適用される。

■金融取引に係る独立企業間価格の検討を行う場合の留意事項など示す

上記のとおり、改正事務運営指針では、現在のOECDTPガイドラインの内容を踏まえた見直しが行われており、金融取引については「金銭の貸借取引」、「債務保証等」、「金融取引に関連した財務上の活動(キャッシュ・プーリング等)」の調査における取扱いなどが示されている(指針3-7)。

指針3-8では「金融取引に係る独立企業間価格の検討を行う場合の留意事項」が示されている。例えば、金融取引に係る比較対象取引を現実に行われる取引の中から見いだすことが困難な場合で、「金融市場における利率その他の現実に行われる取引に依拠した客観的な指標(市場金利等)で当該金融取引と通貨、時期、期間、信用力その他の比較可能性に影響を与える要素が同様の状況の下にあるものにより当該金融取引に係る比較対象取引を想定することができるときは、当該市場金利等を用いて想定した取引を比較対象取引とすることができること」などが示されている(指針3-8(1))。

「取引の当事者に係る比較可能性を検討する場合には、当該当事者の信用格付その他の信用状態の評価の結果を表す指標(信用格付等)を用いることができる」としている(指針3-8(2))。

また、改正指針の考え方などを踏まえた事例が、「別冊 移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」の改正部分で示されており、【事例4】(独立価格比準法に準ずる方法を用いる場合)≪前提条件2:金銭の貸借取引の場合≫では、公開データベースより、借手となる国外関連者と同程度の信用格付けを有する法人が同様の条件で借り入れる金銭の貸借取引の利率を複数把握し、その利率の平均を基に独立企業間価格を算定する方法を選定することを妥当と認めているケースを例示している。

なお、従前に募集されていた パブリックコメントの結果も6月10日にe-govで公表 されており、金融取引部分については指針3-8を中心に、寄せられた意見とそれに対する国税庁の考え方が示されている。

■費用分担契約についてもOECDTPガイドラインを踏まえ、指針内容を改正

改正指針では「費用分担契約」についてもOECDTPガイドラインを踏まえた改正が行われており、費用分担契約の定義の明確化(指針3-15)、移転価格税制上の取扱い(指針3-16)、調査における留意事項(指針3-17)、既存の無形資産の使用がある場合の検討事項(指針3-18)、契約に係る検討を行う書類(指針3-19)が示されている。