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[全文公開] Net GloBE Income(純GloBE所得)

佐和公認会計士事務所 公認会計士・税理士 佐和 周

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本連載は、国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものですが、今回も 前回 に引き続き、デジタル課税等に係る新しい国際課税ルールに関連する用語です。

Net GloBE Income の訳が「純GloBE所得」では、ほぼ何も説明していないことになりますが、この用語は、その名のとおり、GloBEルール( Global Anti-Base Erosion rules )に関係するものです。

したがって、 GloBE Income の部分は、GloBEルールにおける「所得」という意味合いになります。また、 GloBE Income の前に net が付いているのは、国・地域の各構成事業体( Constituent Entity )のGloBE所得( GloBE Income )とGloBE損失( GloBE Losses )を合計したもの、つまり「純額」という意味合いです。ただし、GloBE所得とGloBE損失の違いは、前者が正の金額、後者が負の金額という点だけなので、以下では、両者を総称して「GloBE所得」と呼びます。

以前、GloBEルールにおける実効税率( ETR:Effective Tax Rate )について解説した際、実効税率は、国・地域の各構成事業体の「調整対象税金( Adjusted Covered Taxes )」を「純GloBE所得」で除して計算するということをお伝えしました。つまり、この純GloBE所得の位置付けとしては、実効税率の分母となる数値ということです。

GloBEルールに関する用語には定訳があるわけではないので、このシリーズでは、日本語訳自体よりもその用語の内容をお伝えすることを主眼にしていますが、「GloBE所得」のベースとなる金額は、税務上の数値ではなく、財務会計上の数値です。具体的には、構成事業体の会計上の純損益( Financial Accounting Net Income or Loss )を基礎として、これに諸々の調整を加えて計算する必要があります。

調整項目は複雑なので書ききれませんが、主な調整対象という意味では、税金費用( Net Taxes Expense )、配当( Excluded Dividends )、持分法投資損益( Excluded Equity Gain or Loss の一部)、再評価モデルに係る評価差損益( Included Revaluation Method Gain or Loss )、退職給付費用( Accrued Pension Expense )などのうち一定のものといったところです。