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富裕層の相続の法務と海外の相続税 第2回 富裕層の相続の法務(総論)

シティユーワ法律事務所  酒井 ひとみ

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1.はじめに

クレディ・スイス・リサーチ・インスティチュートのグローバル・ウェルス・レポート2021 によると、2020年度、日本における、100万米国ドル 以上の資産を保有するいわゆる「富裕層 」は約366万人(全体の約6.5%)で、米国、中国に次いで世界で3番目に多いとされています。5,000万米国ドル 以上を保有する超富裕層となると、米国が全体の55%を占め、2位の中国以下を大きく引き離すこととなりますが、それでも、日本は米国、中国、ドイツに次ぎ世界で4番目に位置し、資産が1億米国ドル 以上の超富裕層も1,580名いるとされています。日本は、世界でもトップレベルの富裕層が多い国といえます。

相続において、弁護士が携わる法務としては、従来、遺産分割、遺言無効、遺留分をめぐる紛争や、さらに事業承継に関しては、経営権をめぐる紛争等、調停・訴訟等の紛争解決がメインと考えられてきました。トラブルが生じてから、クライアントの要請に基づき、スポット的に関与するというものです。

しかしながら、富裕層のクライアントが共通して専門家に求めていることは、クライアント(及びそのファミリー)が保有する資産を、将...