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東南アジア・オセアニア地域 定点観測『主要7ヶ国における最近の税制改正と執行状況』

PwC日系企業支援ネットワーク 東南アジア・オセアニア地域 税務共同統括責任者 PwC税理士法人 パートナー 神保 真人
PwCインドネシア パートナー 菅原 竜二

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過去2年以上に渡り東南アジア地域においても猛威を振るった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染状況も比較的落ち着きつつあり、本社からの出張なども増え、日系企業の当地域での企業活動が活発化の兆しを見せている。

東南アジア地域の各国税務当局は、長期化したCOVID-19による財政支出増加の財源を確保するための施策を含む多様な税制改正を発表している。また、歳入に占める税収の割合が高い当地域の各国税務当局は、財源の確保のために、税務執行を強化する傾向が依然として顕著である。

このような状況で、昨今、経済協力開発機構(OECD)による「経済のデジタル化から生じる税務上の課題に対処するための二つの柱」に関連する税制改正や環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点に関連する税制改正が、東南アジア地域の各国税務当局でも既に活発に検討され始めている。本稿執筆時点においては特に大きな関連改正は無いものの、引き続き税制改正の状況、関連税制の執行状況については注視していく必要がある。

また、今後は2022年12月15日以降に開始する事業年度に関する監査からの適用が予定されている国際会計士倫理基準審議会(IESBA)が定める独立性に関する倫理基準の強化への対応や、税務業務へのIT導入対応等、本社目線からの税務ガバナンスの強化が企業の重要な経営課題となることが想定され、益々、本社としても税務リスクの高い東南アジア地域の現地の税制改正や税務執行の最新状況を理解し、本社と現地子会社がより一層連携を強化してグループ全体として税務リスクの低減を目指すことが重要となる。

本稿では、昨年に続き、東南アジアの主要6ヶ国(シンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピン)の税制改正や税務執行の最新状況、並びに日系企業が取るべきベストプラクティスについて解説する。

オーストラリアについては、今年の5月に...