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[全文公開] 国際税務の英単語 Top-up Tax Percentage(トップアップ税率)

佐和公認会計士事務所 公認会計士・税理士 佐和 周

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本連載は、国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものですが、今回も 前回 に引き続き、デジタル課税等に係る新しい国際課税ルールに関連する用語です。

何度かお伝えしてきましたが、GloBEルール( Global Anti-Base Erosion rules )における実効税率( ETR:Effective Tax Rate )は、国・地域の各構成事業体( Constituent Entity )の「調整対象税金( Adjusted Covered Taxes )」を「純GloBE所得( Net GloBE Income )」で除して計算します。

実効税率の計算自体が大変ですが、GloBEルールについては、当然ながら実効税率を計算して終わりということではなく、次の段階で、それを最低税率( Minimum Rate )である15%と比較することになります。

GloBEルールの構成要素である IIR (所得合算ルール)を思い浮かべてもらうといいですが、GloBEルールの基本的な考え方は、軽課税国(の子会社等)へ帰属する所得について、親会社等の国で最低税率まで上乗せ( top-up )して課税するというものです。例えば、ある国・地域の実効税率が10%であれば、最低税率である15%との差は5%なので、これを親会社等の国で上乗せするイメージです。

トップアップ税率( Top-up Tax Percentage )とは、この例でいう5%部分であり、簡単な算式でいうと「トップアップ税率=最低税率-実効税率」で計算されます。

ちなみに、 top-up は「上乗せ」という意味であり、日本ではあまり使わないかもしれませんが、プリペイドの携帯電話などの残高にチャージするイメージの言葉です(動詞でも使えます)。ここでは、最低税率の15%までの「上乗せ」を行う、つまり「上乗せ税率」というニュアンスですね。

なお、「15%-10%」という計算で、「5%」という答えを出す場合、英語では percentage point difference のような表現を使います。「10%→15%」という変化の場合、「50%増えた」または「5%増えた」という2つの言い方が可能ですが、今回のように後者を指したい場合、 percentage point という表現を使うということです。