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令和3年度税制改正による納税管理人制度の拡充と実務上の留意点

PwC税理士法人 税理士・公認会計士 朝倉 雅彦
 税理士・公認会計士 荒井 優美子

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1.はじめに

納税管理人制度は、 国税通則法(以下、「通則法」)第117条 第1項に基づき、日本国内に住居所等を有しない納税者(個人又は法人)が、納税申告書の提出その他国税に関する事項を処理させるために、納税者の選任により置かれる制度である。「納税者」には、国税に関する法律の規定により還付を受けるための申告書又は確定損失申告書を提出することができる者も含まれる( 通則法基本通達(以下、「通則基通」)第117条 関係 1)。

令和3年度税制改正前は、納税者の自発的な(納税管理人の)選任、(税務署長への)届出の制度となっていたが、令和3年度税制改正(以下、「本改正」)により、税務署長が納税者に対して納税管理人の指定及び届出を要請し、さらには国内に住所又は居所を有する一定の者(国内便宜者)を納税管理人(以下、「特定納税管理人」)に指定する制度に拡充された。改正は、2022年1月1日以後の要請及び指定について適用される。本稿では、改正の概要と特定納税管理人となりうる場合の留意事項について解説する。

2.改正の概要と背景

納税管理人制度は、通則法制定(1962年3月31日)前より国税徴収法等において規定が置かれ...