国際税務研究 外国船会社の国際運輸業免税所得の範囲
青山学院大学 名誉教授 渡辺 淑夫
設例
1 A国の船会社であるB社は、主としてコンテナ船を用いた国際海上運輸業を営んでいるが、これまで日本国内に支店その他の恒久的施設(PE)を有したことはなく、不定期船(tramp)による日本と第三国との間の輸送実績はあるものの、PEを有しない非居住外国船会社であったところから、日本において課税問題が生じたことはなかった。
この度B社では、最近の極東地域における海運業界の情勢に鑑み、日本国内に新たに支店を設けるとともに、日本を起点とする定期船(liner)の運航を開始することによる業容の拡大を図ることとし、早速そのための集荷活動等の営業促進を図ることになった。
これに伴い、既設の他の国の支店において現に行っている業務内容を参考にしながら、今後新設の日本支店において行われることになるであろう各種の業務内容について検討し、合わせてこれに対する日本における課税関係についても、専門家の意見を聞きながら、これに対する対応の在り方について検討しているところである。
2 この検討の結果、B社が今後日本国内に支店を設置した上で行う国際海上運輸業の所得については、日本の税制上、そのうちの、いわゆる「積地基準」に...