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国際課税の大原則を転換するデジタル経済課税/第1の柱に係る最近の議論の動向について 第2回 課税ベース、利益Aの配分、二重課税の排除、利益Aの執行、税の安定性、DSTの撤廃

PwC税理士法人 国際税務サービスグループ(移転価格) パートナー 舩谷 晃一
 ディレクター 城地 徳政

( 92頁)

今回の第2回目では 前回 に引き続き、利益Aの「適用プロセス ステップ3~5」の概要のほか、執行・税の安定性・DSTの撤廃に係る点について概説します。

4.第1の柱/利益Aの適用プロセス(承前)

< 第1回で説明 >

ステップ1(対象範囲の決定):多国籍企業グループが利益Aの対象となるかどうかの判定

ステップ2(ネクサス及び収益に係るソースルール):利益Aの下で対象グループの残余利益の一部に対する課税権を有する市場国の決定

<本稿で説明>

ステップ3(課税ベースの決定):対象グループの利益Aの課税標準の決定

ステップ4(利益Aの配分):課税権を有する市場国への利益Aの配分

ステップ5(二重課税の排除):利益Aの二重課税の排除

ステップ3(課税ベースの決定)

(1)「調整後税引前利益(Adjusted Profit Before Tax)」の算定

利益Aの課税標準はグループの利益に基づいて決定され、IFRS及び同等の財務会計基準に従って作成されたグループのUPE(最終親会社)の連結財務諸表に計上された純利益をベースに一定の調整1を行い、過年度の損失を控除した金額を「調整後税引前利益(Adjusted Profit B...