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国際税務研究 学校法人の国外進出に伴う収益事業の課税関係

青山学院大学 名誉教授 渡辺 淑夫

( 122頁)

設例

 日本の学校法人であるA学院では、日本国内の本校として大学院を擁する総合大学のほか一貫教育を目的とする附属の高等学校、中学校、小学校等を経営しているが、昨今の国内における急激な少子高齢化の進展に伴い、外国人入学希望者増加に力を入れてもなお全体として入学希望者の減少傾向が無視できないようになってきているところから、ここ数年来、主として世界各国のうち高等教育を望む若年層が多いにもかかわらずこれに見合う教育施設が著しく不足している国に分校を設けて、これにより学生数の充足と経営基盤の強化拡大に注力しているところである。

 ところで、学校経営というものの性質上、学生数が増加すればするほど、本来の教育事業だけでなく、これに付随して欠くことのできない学生の日常生活のための環境サービス事業の充実を図ることが不可欠となるほか、学校経営上の財務基盤の充実という面からも、物品販売業、不動産業、物品貸付業、飲食店業その他の税法上「収益事業」とされるものを営むことがごく通常のこととなる。

A学院でも、日本の本校における学校経営には当然にこれらの収益事業を行うことが必要であり、現に毎期これについて法人税の確定...