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TP Controversy Report〈67〉 シンガポールにおける移転価格税制及び移転価格調査の特徴

EY Corporate Advisors Pte. Ltd.(EYシンガポール)  梅本 祥弘

( 100頁)

1 はじめに

シンガポールの移転価格税制、特に移転価格調査にはどのような印象をお持ちでしょうか。多様な優遇税制を用意し、投資を誘致するなど企業に寄り添った政策を取っていることから、移転価格調査は厳格ではないといった印象をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

筆者の印象としては、不合理な課税等が行われる可能性は他国と比べて高くはないものの、規模や業種を問わず、移転価格の調査が行われており、また、シンガポールの内国歳入庁(Inland Revenue Authority of Singapore(以下「IRAS」))は移転価格に関する知見、調査経験も豊富であることから、複雑な議論に発展することもあり、移転価格調査は一筋縄ではないと感じています。例えば、移転価格文書上、レギュレーションに即した項目が網羅されていないといった指摘を受ける企業や、調査への備え・調査時の対応が不十分であることで移転価格課...