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移転価格税制についての素朴な疑問⑱ 企業グループ内役務提供の対価はどう決めれば良いか(2)

外国法共同事業 ジョーンズ・デイ法律事務所 弁護士 井上 康一

( 72頁)

Ⅰ はじめに

1 問題の所在

2 検討対象

Ⅱ 移転価格事務運営指針の変遷

1 平成13(2001)年制定時

~二つの算定方法~

2 平成20(2008)年改正

~三つの算定方法~

3 平成30(2018)年改正

~四つの算定方法~

4 まとめ

Ⅲ 移転価格事務運営指針3-11の整理

1 三類型の対比

2 主な特徴

Ⅳ 納税者の取扱いと税務当局の対応

1 問題の所在

2 場合分けによる検討

3 まとめ

Ⅴ まとめ

1 本稿のまとめ

2 外国子会社側の問題

3 次回のテーマ

Ⅲ 移転価格事務運営指針3―11の整理

2 主な特徴

(1)はじめに

図2の整理を踏まえ、低付加価値の役務提供に係る三つの算定方法に関し、特に重要と考えられる留意点を、以下にまとめておく。具体的には、三類型の低付加価値の役務提供に共通する点を(2)で列挙した後に、(3)で相違点を取り上げる。特に、国税庁の公式見解によれば、三つの算定方法の適用者が、それぞれ限定されている点((3)(a)参照)が重要である。

(2)共通点

上記三類型は、いずれも内部比較対象取引のない低付加価値サービスの提供という共通性をもっている。また、役務提供の対価算定のために用いる「総原価の額」の考え...