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国際課税の大原則を転換するデジタル経済課税/第1の柱に係る最近の議論の動向について 第3回(最終回) 利益B:一定の販売会社が得るべき独立企業間利益の算定を簡素化し効率化する新ルールの動向

PwC税理士法人 国際税務サービスグループ(移転価格) パートナー 舩谷 晃一
 ディレクター 城地 徳政
 シニアマネージャー 清水迫 誠

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2022年12月8日、経済協力開発機構(OECD)は、第1の柱の利益Bに係るパブリックコンサルテーション(公開協議)文書 を公表しました。公開協議文書は、基礎的なマーケティング及び販売活動(Baseline marketing and distribution activities)に関連者間で従事する販売会社に配分する対価(利益)を標準化する利益Bの主な設計要素を定めています。

公開協議文書は、何が(販売会社所在地国における)基礎的なマーケティング及び販売活動であり、実務上どのように特定されるか、そして基礎的なマーケティング及び販売活動の範囲内とされた取引が独立企業原則(Arm's Length Principle:ALP)に従ってどのように価格設定されるべきかについて、現在の進捗状況を概説しています。また、いくつかの具体的な論点について、さらなる検討が進行中であるとして利害関係者からの見解(パブリックコメント)が求められました

利益Bは利益Aと異なり、その対象範囲が多国籍企業の収益規模や利益水準により限定されないことから、グループ内に販売会社を有する多国籍企業に広く影響があると想定...