※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

スイスにおける個人課税と移住の際の留意点

Loyens & Loeff Switzerland LLC パートナー Beat Baumgartner
Loyens & Loeff Switzerland LLC アソシエイト Livia Lorino
森・濱田松本法律事務所 シニア・アソシエイト 山川 佳子

( 44頁)

1.はじめに

現代においては国家間での移動が容易になり、より自由に居住地を選択できるようになった。そして、この場合、経済上のメリットを理由として「ホームステート(Home State)」の選択をすることがある。この点、スイスは富裕層の居住地として非常に魅力的な国である。その理由は、ヨーロッパの中心に位置するという戦略的な立地、世界各国との良好な二国間・多国間関係、政治・経済・金融の安定性といったスイスの「ソフトな要素」だけでなく、そのユニークな税制にある。世界的に、特に欧州連合(EU)内においては、各国間の税制の透明化・競争の減少という方向性が指向されているが、スイスはこの現状にうまく適応し、依然として納税者に有利な税制を維持している。

また、上記の点に加え、スイスと日本は多くの基本的な価値観を共有しており、経済・政治・国際分野において緊密な協力関係にある。

本稿では、個人資産のキャピタルゲインの非課税制度、一括課税(lump-sum tax)制度、相続税・贈与税の非課税等のスイス税制の特長をはじめとしたスイス税制の概要を紹介するとともに、海外移住に関心のある日本居住者についての日本の国内・...