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APAとICAPの比較

太陽グラントソントン税理士法人 パートナー  朝倉 克彦
グラントソントン LLP マネージング ディレクター スティーブン・ラップ
グラントソントン LLP パートナー  渡辺 久美子
NERAエコノミックコンサルティング マネージング ディレクター 倉本 正丈

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1 はじめに

移転価格は、国際取引を行う多国籍企業にとって最も重要な税務課題のひとつです。現在、独立企業間原則が世界的に受け入れられ、各国の移転価格税制がこの原則に基づいて制度化されています。しかし、その実際の適用については各国の税務当局間で統一されていないのが現状です。そのため、納税者と税務当局との間で見解の相違が度々生じ、更正処分がなされた場合、移転価格税制の特性上、二重課税の発生が避けられません。二重課税解消に関する手段は各国で制度化されていますが、そのプロセスには複数の政府、税務当局が関与するため、手続きが複雑になりがちで、納税者は想定を上回る費用とリソースを費やすことになる可能性があります。また、二重課税解消のためのコストやリソース負担は多国籍企業にとって決して小さくありません。予見可能性の低さという移転価格課税の特性は、納税者の移転価格管理をより困難にしている大きな理由のひとつです。

移転価格課税に関する納税者の予見可能性を確保し、このような移転価格上の紛争を未然に防ぐことで、多国籍企業が負う負担を軽減する制度として、まず挙げられるのが事前確認(Advance Pricing ...