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ドイツ国内登記IP資産についてのロイヤリティ課税の2023年改正

ドイツ・EUビジネスコンサルタント  池田 良一

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1.はじめに

2022年12月31日までのドイツ所得税法第49条第1項第2号fならびに第6号の規定に基づけば、ドイツ国内の公的な登記簿・レジスター等に登記(登録)された特許権等(IP資産)に関しては、たとえその使用料(ロイヤリティ)の支払いが、ドイツ国外で行われた場合でも、すなわち、日本の会社(親会社)がそのような特許権を所有し、たとえばアジアの生産子会社から、そのようなドイツの登記簿・レジスターに登記(登録)された特許権に基づく使用料(ロイヤリティ)を受け取っていた場合、ドイツ国内への特許権の登録(登記)以外にはドイツに関するネクサス(関連性・接点)がまったくないにもかかわらず、その使用料(ロイヤリティ)は、ドイツ国内所得と見なされて、ドイツでの課税に服するとされていた。受取人も支払人もドイツの非居住者であり、どちらもドイツにPE(恒久的施設)を有していない場合でも、ドイツでの源泉税が発生するという解釈である。後述するような紆余曲折を経て、同ドイツ所得税法の第49条第1項の規定(レジスター・ケース条項)も、2023年1月1日付で改正されて、かなり緩和されたものとなった。関係する日系企業もそれなりの数に上ることを踏まえて、本稿は、2023年1月1日以降の新規定の内容を具体的に紹介・コメントすると共に、OECDのBEPSプロジェクト、特にBEPS 2.0(Pillar1とPillar2のデジタル課税の再検討に関するプロジェクト:課税権の部分的再配分と法人税最低課税)のもとでの、約2年余りの間の「税務当局の右往左往」ともいえる課税執行・税法改正プロセスについて、一つの国の中の国際税務分野に関わってくる税制規定あるいは課税執行がどうあるべきかの議論も含めてコメントする。ちなみに、ドイツの専門家の間で本案件は、「レジスター・ケース(Registerfalle)」と簡略化された表現で呼...