令和5年度税制改正 国際課税関係の改正について 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の創設(グローバル・ミニマム課税制度)について(上)
中西 佑太
堀越 聖啓
吉田 雅史
米倉 弘輝
はじめに
令和5年度税制改正においては、「第2の柱」(グローバル・ミニマム課税)のうち所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)に係る法制化(各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の創設等)を行うこととされました。
この各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税関係の改正は、次の法令により行われています。
(法律) ・ 所得税法等の一部を改正する法律(令5.3.31法律第3号) (政令) ・ 法人税法施行令の一部を改正する政令(令5.6.16政令第208号) ・ 地方法人税法施行令の一部を改正する政令(令5.6.16政令第209号) ・ 国税通則法施行令の一部を改正する政令(令5.6.16政令第210号) ・ 租税特別措置法施行令の一部を改正する政令(令5.6.16政令第211号) (省令) ・ 法人税法施行規則の一部を改正する省令(令5.6.30財務省令第47号) ・ 地方法人税法施行規則の一部を改正する省令(令5.6.30財務省令第48号) ・ 国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令の一部を改正する省令(令5.6.30財務省令第49号) |
第一 法人税法関係
一 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の創設
Ⅰ 導入の経緯及び制度の概要
(1) 導入の経緯
① BEPSプロジェクトとその後の国際的な議論の動向
「BEPSプロジェクト」は、公平な競争環境の確保という考え方の下、各国政府・グローバル企業の透明性を高め、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting)を防止するために、国際課税ルール全体を見直す取組みとして、平成24年(2012年)にOECD租税委員会によって立ち上げられ、その後、平成27年(2015年)に「BEPS最終報告書」が公表されました。
BEPSプロジェクトにおいて示された15の行動計画のうち、行動1では「電子経済の課税上の課題への対応」について検討が行われ、消費課税上の課題については見直しを提言するに至りましたが、法人課税における対応については合意に至らず、将来に向けて検討を継続することとされていました。その後の検討を経て、令和3年(2021年)10月に、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」(Inclusive Framework on BEPS)において、市場国への新たな課税権...
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