※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

米国における移転価格税制の遵守に関する警鐘

太陽グラントソントン税理士法人 パートナー 朝倉 克彦
グラントソントン LLP マネージングディレクター スティーブン・ラップ
グラントソントン LLP パートナー 渡辺 久美子
NERAエコノミックコンサルティング マネージングディレクター 倉本 正丈

( 72頁)

1 はじめに

米国内国歳入庁(IRS)は長年にわたり移転価格税制を執行してきましたが、度重なる移転価格訴訟での敗訴により、その執行能力には疑問符が付くようになりました。このような執行能力の低下を背景に、一部の多国籍企業は移転価格課税とペナルティを回避するために、重要な取引にもかかわらず限定的な情報のみを開示する、または不確実性の高い税務ポジションについて引当金を全く計上しないか、あるいはその金額を過少に計上するなどしていました。

しかし、近年IRSの執行能力に大きな改善がみられ、大規模な移転価格事案で多額の移転価格課税に成功しており、今後もその手を緩めないことを表明しています。たとえローカルファイ...