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[全文公開] 国際税務の英単語 qualified[registered]invoice issuer(適格請求書発行事業者)

佐和公認会計士事務所 公認会計士・税理士 佐和 周

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本連載は、国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものですが、今回も前回に引き続き、消費税のインボイス制度に関係する用語です。

前回 は、「適格請求書」を qualified invoice と訳しました。同じ要領でいくと、「適格請求書発行事業者」は、 qualified invoice issuer と訳せます。

ここでの issuer は「発行者」という意味で、元となる issue という動詞は「~を発行する」という意味です。つまり、 to issue an invoice (請求書を発行する)という関係なので、「請求書の発行者」をシンプルに invoice issuer と訳しているわけです。これが「請求書発行事業者」の部分の訳なので、これに適格請求書の「適格」と同じ qualified を付けて、 qualified invoice issuer という流れです。

ちなみに、適格請求書発行事業者の立場で、「請求書を発行する」と言いたい場合は、上記のとおり、 to issue an invoice という表現が使えます。一方、適格請求書発行事業者のアクションとして、「交付する」というニュアンスを強めたければ、 issue の代わりに provide (~を提供する)という動詞を使って、 to provide qualified invoices to customers のように表現できます。ついでにお伝えすると、交付した適格請求書の写しの保存義務に言及する場合、 to retain copies of qualified invoices などと訳しておけばOKです。

なお、日本のインボイス制度において、適格請求書を交付できるのは、登録を受けた課税事業者だけです。そのため、「適格請求書発行事業者」について、「登録している( registered )」という点を強調する形で、 registered invoice issuer と訳すこともできます。

実際のところ、海外とのコミュニケーションでは、 qualified invoice issuer よりも registered invoice issuer のほうが、意味合いが伝わりやすいかもしれません。これは、海外における付加価値税( VAT: value added tax )でも、一般に登録手続きがあって、 VAT -registered business[company] などの表現が使われているからです。日本の消費税( consumption tax )はある意味で特殊なものなので、海外とのやり取りにあたっては、より一般的な付加価値税の用語を使うのも1つのコツといえます。