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[全文公開] 参考資料 「令和6年度税制改正大綱(抄)」 (令和5年12月14日 自由民主党・公明党)

( 141頁)

第一 令和6年度税制改正の基本的考え方

1. (省略)

2.生産性向上・供給力強化に向けた国内投資の促進

(1) (省略)

(2)イノベーションボックス税制の創設

利益の源泉たるイノベーションについても国際競争が進んでおり、わが国においても、研究開発拠点としての立地競争力を強化し、民間による無形資産投資を後押しすることが喫緊の課題となっている。こうした観点から、国内で自ら行う研究開発の成果として生まれた知的財産から生じる所得に対して優遇するイノベーションボックス税制を創設する。

具体的には、企業が国内で自ら研究開発を行った特許権又はAI分野のソフトウェアに係る著作権について、当該知的財産の国内への譲渡所得又は国内外からのライセンス所得に対して、所得の30%の所得控除を認める制度を設けることとする。これにより、対象所得については、法人税率約7%相当の税制優遇(法人実効税率ベースで見ると現在の29.74%から約20%相当まで引き下がる税制優遇)が行われることとなる。本税制は、所得全体から、知的財産から生じる所得のみを切り出して税制優遇を行うという、わが国で初の税制である。国際的に見ても、イノベーションボックス税制の創設は、G7ではフランス、イギリスに次ぐ3番目であり、海外に遜色ない制度で無形資産投資を後押ししていく。

イノベーションボックス税制の対象範囲については、制度の執行状況や効果を十分に検証した上で、国際ルールとの整合性、官民の事務負担の検証、立証責任の所在等諸外国との違いや体制面を含めた税務当局の執行可能性等の観点から、財源確保の状況も踏まえ、状況に応じ、見直しを検討する。

他方、本税制と一部目的が重複する研究開発税制については、試験研究費が減少した場合の控除率の引下げを行うことにより、投資を増加させるインセンティブをさらに強化するためのメリハリ付けを行う。

(3)~(4) (省略)

3.経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し

(1)~(2) (省略)

(3)グローバル化を踏まえた税制の見直し

① 新たな国際課税ルールへの対応

BEPSプロジェクトの立上げ時から国際課税改革に関する議論を一貫して主導してきたわが国にとって、令和3年10月にOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」においてまとめられた、経済のデジタル化に伴う課税上の課題への解決策に関する国際合意の実施に向けた取組みを進めることが重要である。市場国への新たな課税権の配分(「第1の柱」)とグローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)の2つの柱からなる本国際合意のうち、「第2の柱」については、わが国企業の国際競争力の維持及び向上にもつながるものであり、令和5年度税制改正に引き続き、国際合意に則った法制化を進める。

令和6年度税制改正において、所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)については、OECDにより発出されたガイダンスの内容や、国際的な議論の内容を踏まえた制度の明確化等の観点から、所要の見直しを行う。国内ミニマム課税(QDMTT:Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)を含め、OECDにおいて来年以降も引き続き実施細目が議論される見込みであるもの等については、国際的な議論を踏まえ、令和7年度税制改正以降の法制化を検討する。

「第2の柱」の導入における国・地方の対応については、令和5年度税制改正の際の整理に従って次のとおりとする。

イ IIR・軽課税所得ルール(UTPR:Undertaxed Profits Rule)は、外国に所在する法人等が稼得する所得を基に課税する仕組みであり、課税対象と地方公共団体の行政サービスとの応益性が観念できないため、地方税である法人住民税・法人事業税(特別法人事業税を含む。以下同じ。)の課税は行わないこととし、現行の税率を基に法人税による税額と地方法人税による税額が907:93の比率となるよう制度を措置する。

ロ QDMTTは、内国法人等が稼得する所得を基に課税する仕組みであり、応益性が観念できること等を踏まえ、国・地方の法人課税の税率(法人実効税率29.74%の内訳)の比率を前提とした仕組みとする。簡素な制度とする観点から、QDMTTにおける法人住民税・法人事業税相当分については、地方法人税に含めて国で一括して課税・徴収することとし、地方交付税により地方に配分する。これらを踏まえ、法人税による税額と地方法人税による税額が753:247の比率となるよう制度を措置する。

外国子会社合算税制については、国際的なルールにおいても「第2の柱」と併存するものとされており、「第2の柱」の導入以降も、外国子会社を通じた租税回避を抑制するための措置としてその重要性は変わらない。他方、「第2の柱」の導入により対象企業に追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、令和5年度税制改正に引き続き、外国子会社合算税制について可能な範囲で追加的な見直しを行うとともに、令和7年度税制改正以降に見込まれる更なる「第2の柱」の法制化を踏まえて、必要な見直しを検討する。

「第1の柱」については、多数国間条約の早期署名に向けて、引き続き国際的な議論に積極的に貢献することが重要である。今後策定される多数国間条約等の規定を基に、わが国が市場国として新たに配分される課税権に係る課税のあり方、地方公共団体に対して課税権が認められることとなる場合の課税のあり方、条約上求められる二重課税除去のあり方等について、国・地方の法人課税制度を念頭に置いて検討する。

コロナ後の国境を越えたビジネスや人の往来の再拡大なども踏まえて、非居住者の給与課税のあり方について、今後検討を行っていく。あわせて、国際課税制度が大きな変革を迎える中、国内法制・租税条約の整備及び着実な執行など適時に十全な対応ができるよう、国税当局の体制強化を行うものとする。

② 暗号資産等報告枠組み

分散型台帳技術を使用する暗号資産等を利用した国際的な脱税及び租税回避を防止する観点から、令和4年、OECDにおいて策定された暗号資産等の取引や移転に関する自動的情報交換の報告枠組み(CARF:Crypto-Asset Reporting Framework)に基づき、非居住者の暗号資産に係る取引情報等を租税条約等に基づき各国税務当局と自動的に交換するため、国内の暗号資産取引業者等に対し非居住者の暗号資産に係る取引情報等を税務当局に報告することを義務付ける制度を整備する。

③ プラットフォーム課税

デジタルサービス市場の拡大によりプラットフォームを介して多くの国外事業者が国内市場に参入している中で、国外事業者の納めるべき消費税の捕捉や調査・徴収が課題となっている。こうした課題に対し、諸外国では、事業者に代わってプラットフォーム事業者に納税義務を課す制度(プラットフォーム課税)が導入されている。わが国においても、国内外の事業者間の競争条件の公平性や適正な課税を確保するため、プラットフォーム課税を導入する。導入に当たっては、国内の事業者に影響が出ないよう国外事業者が提供するデジタルサービスを対象とし、また、対象となるプラットフォーム事業者は、高い税務コンプライアンスや事務処理能力が求められること等を考慮して、一定の規模を有する事業者とする。

あわせて、国外事業者により行われる事業者免税点制度や簡易課税制度を利用した租税回避を防止するため、必要な制度の見直しを行う。

4. (省略)

5.円滑・適正な納税のための環境整備

(1)~(4) (省略)

(5)外国人旅行者向け免税制度の見直し

外国人旅行者向け免税制度は、平成26年度税制改正以降、免税対象に消耗品を加えるなどの大幅な制度の見直しにより、免税店数の拡大と外国人旅行者の利便性向上を図り、インバウンド消費拡大の重要な政策ツールとなってきた。観光立国の実現に向けて、引き続き、本制度の活用を推進していくことが肝要である。

他方で、足下では多額・多量の免税購入物品が国外に持ち出されず国内での横流しが疑われる事例が多発している。また、出国時に免税購入物品を所持していない旅行者を捕捉し即時徴収を行っても、その多くが滞納となり、本制度の不正利用は看過できない状況となっている。

こうした不正を排除しつつ、免税店が不正の排除のために負担を負うことのない制度とするため、出国時に税関において持ち出しが確認された場合に免税販売が成立する制度とする。実務的には、免税店が販売時に外国人旅行者から消費税相当額を預かり、出国時に持ち出しが確認された場合に、旅行者にその消費税相当額を返金する仕組みとなる。新制度の検討に当たっては、外国人旅行者の利便性の向上や免税店の事務負担の軽減に十分配慮しつつ、空港等での混雑防止の確保を前提として、令和7年度税制改正において、制度の詳細について結論を得る。

さらに令和6年度税制改正においても、横流しされた免税購入物品と知りつつ仕入れた場合に、その仕入税額控除を認めないこととする措置を講ずる。

6.~7. (省略)

第二 令和6年度税制改正の具体的内容

一 個人所得課税 (省略)

二 資産課税 (省略)

三 法人課税

1 (省略)

2 生産性向上・供給力強化に向けた国内投資の促進

(国 税)

(1) (省略)

(2)イノベーションボックス税制の創設

青色申告書を提出する法人が、令和7年4月1日から令和14年3月31日までの間に開始する各事業年度において居住者若しくは内国法人(関連者であるものを除く。)に対する特定特許権等の譲渡又は他の者(関連者であるものを除く。)に対する特定特許権等の貸付け(以下「特許権譲渡等取引」という。)を行った場合には、次の金額のうちいずれか少ない金額の30%に相当する金額は、その事業年度において損金算入できることとする。

① その事業年度において行った特許権譲渡等取引ごとに、次のイの金額に次のロの金額のうちに次のハの金額の占める割合を乗じた金額を合計した金額

イ その特許権譲渡等取引に係る所得の金額

ロ 当期及び前期以前(令和7年4月1日以後に開始する事業年度に限る。)において生じた研究開発費の額のうち、その特許権譲渡等取引に係る特定特許権等に直接関連する研究開発に係る金額の合計額

ハ 上記ロの金額に含まれる適格研究開発費の額の合計額

② 当期の所得の金額

(注1)上記の「関連者」は、移転価格税制における関連者と同様の基準により判定する。

(注2)上記の「特定特許権等」とは、令和6年4月1日以後に取得又は製作をした特許権及び人工知能関連技術を活用したプログラムの著作権で、一定のものをいう。

(注3)特定特許権等の貸付けには、特定特許権等に係る権利の設定その他他の者に特定特許権等を使用させる行為を含む。

(注4)上記の「研究開発費の額」とは、研究開発費等に係る会計基準における研究開発費の額に一定の調整を加えた金額をいう。

(注5)上記の「適格研究開発費の額」とは、研究開発費の額のうち、特定特許権等の取得費及び支払ライセンス料、国外関連者に対する委託試験研究費並びに国外事業所等を通じて行う事業に係る研究開発費の額以外のものをいう。

(注6)令和9年4月1日前に開始する事業年度において、当期において行った特許権譲渡等取引に係る特定特許権等のうちに令和7年4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日前に開始した研究開発に直接関連するものがある場合には、上記①の金額は、次の①の金額に次の②の金額のうちに次の③の金額の占める割合を乗じた金額とする。

① 当期において行った特許権譲渡等取引に係る所得の金額の合計額

② 当期、前期及び前々期において生じた研究開発費の額の合計額

③ 上記②の金額に含まれる適格研究開発費の額の合計額

(注7)本制度の適用において、法人が関連者に対して支払う特定特許権等の取得費又はライセンス料が独立企業間価格に満たない場合には、独立企業間価格によることとし、国内の関連者に対してこれらの費用を支払う場合には、所要の書類を作成し、税務当局からの求めがあった場合には遅滞なく提示し、又は提出しなければならないこととする。また、更正期限を延長する特例、同業者に対する質問検査権、書類の提示又は提出がない場合の推定課税その他所要の措置を講ずる。

(3)試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)について、次の見直しを行う(所得税についても同様とする。)。

① 制度の対象となる試験研究費の額から、内国法人の国外事業所等を通じて行う事業に係る試験研究費の額を除外する。

② 一般試験研究費の額に係る税額控除制度について、令和8年4月1日以後に開始する事業年度で増減試験研究費割合が零に満たない事業年度につき、税額控除率を次のとおり見直すとともに、税額控除率の下限(現行:1%)を撤廃する。

イ 令和8年4月1日から令和11年3月31日までの間に開始する事業年度

8.5%+増減試験研究費割合×30分の8.5

ロ 令和11年4月1日から令和13年3月31日までの間に開始する事業年度

8.5%+増減試験研究費割合×27.5分の8.5

ハ 令和13年4月1日以後に開始する事業年度

8.5%+増減試験研究費割合×25分の8.5

(4)~(6) (省略)

3 (省略)

4 円滑・適正な納税のための環境整備

(国 税)

(1)現物出資について、次の見直しを行う。

① 内国法人が外国法人の本店等に無形資産等の移転を行う現物出資について、適格現物出資の対象から除外する。

(注)上記の「無形資産等」とは、次に掲げる資産で、独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って譲渡、貸付け等が行われるとした場合にその対価が支払われるべきものをいう。

イ 工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの(これらの権利に関する使用権を含む。)

ロ 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)

② 適格現物出資への該当性の判定に際し、現物出資により移転する資産等(国内不動産等を除く。)の内外判定は、内国法人の本店等若しくは外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係る資産等又は内国法人の国外事業所等若しくは外国法人の本店等を通じて行う事業に係る資産等のいずれに該当するかによることとする。

(注)上記の「国外事業所等」とは、国外にある恒久的施設に相当するもの等をいう。

(注)上記の改正は、令和6年10月1日以後に行われる現物出資について適用する。

(2) (省略)

5~6 (省略)

四 消費課税

1 国外事業者に係る消費税の課税の適正化

(国 税)

(1)プラットフォーム課税の導入

① 国外事業者がデジタルプラットフォームを介して行う電気通信利用役務の提供(事業者向け電気通信利用役務の提供に該当するものを除く。以下同じ。)のうち、下記②の指定を受けたプラットフォーム事業者(以下「特定プラットフォーム事業者」という。)を介してその対価を収受するものについては、特定プラットフォーム事業者が行ったものとみなす。

② 国税庁長官は、プラットフォーム事業者のその課税期間において上記①の対象となるべき電気通信利用役務の提供に係る対価の額の合計額が50億円を超える場合には、当該プラットフォーム事業者を特定プラットフォーム事業者として指定する。

③ 上記②の要件に該当する者は、その課税期間に係る確定申告書の提出期限までに、その旨を国税庁長官に届け出なければならない。

④ 国税庁長官は、特定プラットフォーム事業者を指定したときは、当該特定プラットフォーム事業者に対してその旨を通知するとともに、当該特定プラットフォーム事業者に係るデジタルプラットフォームの名称等についてインターネットを通じて速やかに公表するものとし、指定を受けた特定プラットフォーム事業者は、上記①の対象となる国外事業者に対してその旨を通知するものとする。

⑤ 特定プラットフォーム事業者は、確定申告書に上記①の対象となる金額等を記載した明細書を添付するものとする。

⑥ その他所要の措置を講ずる。

(注)上記の改正は、令和7年4月1日以後に行われる電気通信利用役務の提供について適用することとし、特定プラットフォーム事業者の指定制度に係る事前の指定及び届出については、所要の経過措置を講ずる。

(2)事業者免税点制度の特例の見直し

① 特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例について、課税売上高に代わり適用可能とされている給与支払額による判定の対象から国外事業者を除外する。

② 資本金1,000万円以上の新設法人に対する納税義務の免除の特例について、外国法人は基準期間を有する場合であっても、国内における事業の開始時に本特例の適用の判定を行う。

③ 資本金1,000万円未満の特定新規設立法人に対する納税義務の免除の特例について、本特例の対象となる特定新規設立法人の範囲に、その事業者の国外分を含む収入金額が50億円超である者が直接又は間接に支配する法人を設立した場合のその法人を加えるほか、上記②と同様の措置を講ずる。

(注)上記の改正は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用する。

(3)簡易課税制度等の見直し

その課税期間の初日において所得税法又は法人税法上の恒久的施設を有しない国外事業者については、簡易課税制度の適用を認めないこととする。また、適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置の適用についても同様とする。

(注)上記の改正は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用する。

(4)その他所要の措置を講ずる。

(地方税)

消費税におけるプラットフォーム課税の導入に伴い、地方消費税について所要の措置を講ずる。

(注)上記の改正は、令和7年4月1日以後に行われる電気通信利用役務の提供について適用する。

2 外国人旅行者向け免税制度(輸出物品販売場制度)の抜本的な見直し

(国 税)

外国人旅行者向け免税制度については、制度が不正に利用されている現状を踏まえ、免税販売の要件として、新たに政府の免税販売管理システムを通じて取得した税関確認情報(仮称)の保存を求めることとし、外国人旅行者の利便性の向上や免税店の事務負担の軽減に十分配慮しつつ、空港等での混雑防止の確保を前提として、令和7年度税制改正において、制度の詳細について結論を得る。

(注)上記の「税関確認情報(仮称)」とは、免税店で免税購入対象者が免税購入した物品を税関長が国外に持ち出すことを確認した旨の情報をいう。

3 (省略)

4 その他

(国 税)

(1)~(2) (省略)

(3)外国人旅行者向け消費税免税制度により免税購入された物品と知りながら行った課税仕入れについては、仕入税額控除制度の適用を認めないこととする。

(注)上記の改正は、令和6年4月1日以後に国内において事業者が行う課税仕入れについて適用する。

(省略)

五 国際課税

1 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税等の見直し

(国 税)

各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税等について、次の見直しを行うこととする。

(1)構成会社等がその所在地国において一定の要件を満たす自国内最低課税額に係る税を課することとされている場合には、その所在地国に係るグループ国際最低課税額を零とする適用免除基準を設ける。

(2)無国籍構成会社等が自国内最低課税額に係る税を課されている場合には、グループ国際最低課税額の計算においてその税の額を控除する。

(3)個別計算所得等の金額から除外される一定の所有持分の時価評価損益等について、特定多国籍企業グループ等に係る国又は地域単位の選択により、個別計算所得等の金額に含める。

(4)導管会社等に対する所有持分を有することにより適用を受けることができる税額控除の額(一定の要件を満たすものに限る。)について、特定多国籍企業グループ等に係る国又は地域単位の選択により、調整後対象租税額に加算する。

(5)特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供制度について、特定多国籍企業グループ等報告事項等を、提供義務者の区分に応じて必要な事項等に見直す。

(6)外国税額控除について、次の見直しを行う。

① 次に掲げる外国における税について、外国税額控除の対象から除外する。

イ 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に相当する税

ロ 外国を所在地国とする特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等に対して課される税(グループ国際最低課税額に相当する金額のうち各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に相当する税の課税標準とされる金額以外の金額を基礎として計算される金額を課税標準とするものに限る。)又はこれに相当する税

② 自国内最低課税額に係る税について、外国税額控除の対象とする。

(7)その他所要の措置を講ずる。

(地方税)

法人住民税の計算の基礎となる法人税額に各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の額を含まないよう所要の措置を講ずる。

2 外国子会社合算税制等の見直し

(国 税)

(1)内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(いわゆる「外国子会社合算税制」)におけるペーパー・カンパニー特例に係る収入割合要件について、外国関係会社の事業年度に係る収入等がない場合には、その事業年度における収入割合要件の判定を不要とする。

(2)居住者に係る外国子会社合算税制及び特殊関係株主等である内国法人に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例等の関連制度につき、上記(1)と同様の見直しを行う。

(地方税)

個人住民税、法人住民税及び事業税について、内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(いわゆる「外国子会社合算税制」)等の見直しに関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

3 非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備等

(国 税)

(1)非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備

① 令和8年1月1日以後に報告暗号資産交換業者等との間でその営業所等を通じて暗号資産等取引を行う者は、当該暗号資産等取引を行う際(令和7年12月31日において報告暗号資産交換業者等との間でその営業所等を通じて暗号資産等取引を行っている者にあっては、令和8年12月31日までに)、その者(その者が特定法人である場合には、当該特定法人及びその実質的支配者等。(1)において「特定対象者」という。)の氏名又は名称、住所又は本店等の所在地、居住地国、居住地国が外国の場合にあっては当該居住地国における納税者番号その他必要な事項を記載した届出書を、当該報告暗号資産交換業者等の営業所等の長に提出しなければならない。

(注1)上記の「報告暗号資産交換業者等」とは、暗号資産交換業者、電子決済手段等取引業者(電子決済手段を発行する者を含む。)及び金融商品取引業者のうち一定のものをいう。

(注2)上記の「暗号資産等取引」とは、暗号資産等(暗号資産、資金決済に関する法律第2条第5項第4号に掲げる電子決済手段又は一定の電子記録移転有価証券表示権利等をいう。3において同じ。)の売買、暗号資産等と他の暗号資産等との交換若しくはこれらの行為の媒介等又は暗号資産等の移転若しくは受入れに係る契約の締結をいう。

(注3)届出書に記載すべき事項は、電磁的方法による提供も可能とする(下記②の異動届出書についても同様とする。)。

(注4)報告暗号資産交換業者等の営業所等の長は、届出書に記載されている事項を確認しなければならない(下記②の異動届出書についても同様とする。)。

② 上記①の届出書を提出した者は、居住地国等について異動を生じた場合には、異動後の居住地国その他必要な事項を記載した届出書((1)において「異動届出書」という。)を、異動を生じた日等から3月を経過する日までに、報告暗号資産交換業者等の営業所等の長に提出しなければならない。当該異動届出書の提出をした後、再び異動を生じた場合についても、同様とする。

③ 報告暗号資産交換業者等は、上記①の届出書又は異動届出書((1)において「届出書等」という。)に記載された事項のうち居住地国等と異なることを示す一定の情報を取得した場合には、その取得の日から3月を経過する日までに、当該届出書等を提出した者に対し異動届出書の提出の要求をし、その提出がなかったときは、当該情報に基づき住所等所在地国と認められる国又は地域の特定をしなければならない。当該要求又は特定後に再びそのような情報を取得した場合についても、同様とする。

④ 報告暗号資産交換業者等は、その年の12月31日において、当該報告暗号資産交換業者等の営業所等を通じて暗号資産等取引を行った者(外国金融商品取引所において上場されている法人等を除く。)が報告対象契約を締結している場合には、特定対象者の氏名又は名称、住所又は本店等の所在地、居住地国等及び居住地国等が外国の場合にあっては当該居住地国等における納税者番号、暗号資産等の売買等に係る暗号資産等の種類ごとに、暗号資産等の名称並びに暗号資産等の売買の対価の額の合計額、総数量及び件数その他必要な事項((1)において「報告事項」という。)を、その年の翌年4月30日までに、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)又は光ディスク等の記録用の媒体を提出する方法により、当該報告暗号資産交換業者等の本店等の所在地の所轄税務署長に提供しなければならない。

(注)上記の「報告対象契約」とは、暗号資産等取引に係る契約のうち次に掲げる者のいずれかが締結しているものをいう。

イ 租税条約等の相手国等のうち一定の国又は地域(ロにおいて「報告対象国」という。)を居住地国等とする者(ロにおいて「報告対象者」という。)

ロ 報告対象国以外の国又は地域を居住地国等とする特定法人で、その実質的支配者が報告対象者であるもの

⑤ 報告暗号資産交換業者等は、特定対象者の居住地国等に関する事項その他必要な事項に関する記録を作成し、保存しなければならない。

⑥ 届出書等の不提出若しくは虚偽記載又は報告事項の不提供若しくは虚偽記載等に対する罰則を設けるほか、報告制度の実効性を確保するための所要の措置を講ずる。

⑦ 外国居住者等に係る暗号資産等取引情報の自動的な提供のための報告制度を整備する。

⑧ その他所要の措置を講ずる。

(2)非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度等の見直し

① 報告金融機関等について、次の見直しを行う。

イ 報告金融機関等の範囲に、電子決済手段等取引業者及び特定電子決済手段等を発行する者を加える。

(注)上記の「特定電子決済手段等」とは、次に掲げるものをいう。

(イ)資金決済に関する法律第2条第5項第1号から第3号までに掲げる電子決済手段

(ロ)物品等の購入等の代価の弁済のために使用することができる財産的価値(一定の通貨建資産に限るものとし、電子決済手段、有価証券及び前払式支払手段等を除く。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

ロ 報告金融機関等に係る収入割合要件について、投資法人等に係る収入割合の計算の基礎となる有価証券等に対する投資に係る収入金額の範囲に暗号資産等に対する投資に係る収入金額を加えるほか、所要の措置を講ずる。

② 特定取引の範囲に、次に掲げる取引を加える。

イ 特定電子決済手段等(上記①イ(注)(イ)に掲げるものに限る。)の管理に係る契約の締結

ロ 特定電子決済手段等(上記①イ(注)(ロ)に掲げるものに限る。)の発行による為替取引に係る契約の締結

(注1)特定取引から除外される取引の範囲に、報告金融機関等との間でその営業所等を通じて上記イ及びロに掲げる取引を行う者の有する当該取引に係る特定電子決済手段等のうち、その合計額の90日移動平均値が100万円を超えることがないと認められる一定の要件を満たすものである場合における当該取引を加える。

(注2)報告金融機関等は、当該報告金融機関等の営業所等を通じて上記イ及びロの特定取引を行った者の有する当該特定取引に係る特定電子決済手段等の合計額の90日移動平均値が、その年中のいずれの日においても100万円を超えなかった場合には、当該特定取引に係る契約に関する報告事項については、当該報告金融機関等の本店等の所在地の所轄税務署長に提供することを要しない。

ハ 暗号資産、電子決済手段又は電子記録移転有価証券表示権利等の預託に係る契約の締結

(注)報告金融機関等は、令和7年12月31日以前に当該報告金融機関等との間でその営業所等を通じて上記イからハまでの特定取引を行った者で同日において当該特定取引に係る契約を締結しているものに係る特定対象者につき、既存特定取引に係る特定手続と同様の手続を実施しなければならない。

③ 社債、株式等の振替に関する法律の改正に伴い、特定取引から除外される取引の範囲に、振替特別法人出資に係る特別口座の開設に係る契約の締結を加える。

④ 特定法人から除外される法人に係る収入割合要件について、法人に係る収入割合の計算の基礎となる投資関連所得の範囲に暗号資産等(暗号資産等デリバティブ取引を含む。)に係る所得を加えるほか、所要の措置を講ずる。

⑤ わが国及び租税条約の相手国等の双方の居住者に該当する者について、当該租税条約上の双方居住者の振分けルールにかかわらず、わが国及び当該相手国等の双方を居住地国として取り扱う。

⑥ 新規特定取引等に係る特定手続について、次の見直しを行う。

イ 報告金融機関等は、令和8年1月1日以後に当該報告金融機関等との間でその営業所等を通じて特定取引を行う者が届出書を提出しなかった場合には、特定対象者につき、既存特定取引に係る特定手続と同様の手続を実施しなければならない。

ロ 報告金融機関等は、特定対象者に関する事項の変更等があることを知った一定の場合には、当該特定対象者の一定の情報を取得するための措置を講じなければならない。

⑦ 報告金融機関等による報告事項の提供について、次の見直しを行う。

イ 報告対象外となる者の範囲に、外国金融商品取引所において上場されている法人等と一定の関係がある組合等を加える。

ロ 報告事項の範囲に、次に掲げる事項を加える。

(イ)特定取引を行う者の署名等がなされたものであることその他の一定の要件の全てを満たす新規届出書等が提出されているか否かの別

(ロ)特定取引に係る契約が報告金融機関等と複数の者との間で締結されているものであるか否かの別等

(ハ)特定法人とその実質的支配者との関係

(ニ)特定取引に係る契約を締結している者と当該特定取引に係る報告金融機関等(一定の組合契約に係る組合等に係るものに限る。)との関係

(ホ)特定取引の種類

(ヘ)新規特定取引又は既存特定取引の別

⑧ その他所要の措置を講ずる。

(注)上記の改正は、令和8年1月1日から施行する。

4 その他

(国 税)

(1)対象純支払利子等に係る課税の特例(いわゆる「過大支払利子税制」)の適用により損金不算入とされた金額(以下「超過利子額」という。)の損金算入制度について、令和4年4月1日から令和7年3月31日までの間に開始した事業年度に係る超過利子額の繰越期間を10年(原則:7年)に延長する。

(2)子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避を防止するための措置(子会社株式簿価減額特例)によりその有する子法人の株式等の帳簿価額から引き下げる金額の計算を行う場合に、その子法人から受ける対象配当金額のうち特定支配関係発生日以後の利益剰余金の額から支払われたものと認められる部分の金額を除外することができる特例計算について、特定支配関係発生日の属する事業年度内に受けた対象配当金額(その特定支配関係発生日後に受けるものに限る。)についても、その特例計算の適用を受けることができることとする。

(3)外国金融機関等の店頭デリバティブ取引の証拠金に係る利子の課税の特例の適用期限を3年延長する。

(4)非居住者又は外国法人が振替特定目的信託受益権のうち社債的受益権に該当するものにつき支払を受ける剰余金の配当等の非課税措置は、適用期限の到来をもって廃止する。

(地方税)

(1)国税(1)の見直しに伴い、法人住民税及び法人事業税について、国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

(2)個人住民税、法人住民税及び事業税について、国税における諸制度の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

六 納税環境整備 (省略)

七 関税 (省略)

第三 検討事項 (省略)