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EU(欧州連合)におけるパブリックCbCRの作成・開示義務

ドイツ・EUビジネスコンサルタント  池田 良一

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1.はじめに

CbCR(Country-by-Country Reporting:国別報告書)は、本来的には、2012年にスタートしたOECD(経済協力開発機構)のBEPSプロジェクトの一環として導入されたものである。より正確にいうと、クロスボーダーのビジネス取引を行う企業に対して作成義務が負わせられた3種類から構成される移転価格文書の一つである(他の2つは、ローカルファイルとマスターファイル)。多くの国で2017年から導入されている。

それに対して、EU(欧州連合)は、加盟国内の税制の透明化をより向上させるという観点から、BEPSプロジェクトのCbCR(国別報告書)を発展させた独自のプロジェクトを開始している。すなわち、連結(単体)年間売上750百万ユーロ超の多国籍企業グループに対して、EU加盟国(+欧州経済領域加盟国[EEA])ならびにEU(欧州連合)の税制目的のブラックリストならびにグレーリストに列挙された国・地域について、CbCR情報とほぼ同じ税務情報を一般開示させるEU指令(2021/2101/EU)を2021年12月に可決・成立させた(EUパブリックCbCR指令)。BEPSプロ...