EUのデジタル時代におけるVAT改革案と日本の消費税の将来
EY税理士法人 荒木 知
1.EUのデジタル時代におけるVAT近代化提案
2022年12月に、欧州委員会(Commission europeenne)は、デジタル化への対応及び推進を通じて欧州連合(EU)における付加価値税(VAT)制度をよりビジネスフレンドリーかつ脱税に対処できるよう近代化するためのVAT in the Digital Age(デジタル時代におけるVAT)提案を行っている。
このデジタル時代におけるVAT提案は、EUにおけるVATの基本法とも考えられるVAT共通システムに関する2006年理事会指令 1 などの複数のEU規則の改正案から構成されている。
これらのEU規則の改正案は2024年1月現在まだ成立しておらず、EU理事会(Conseil de l'Union europeenne)や欧州議会での審理が続いている。2023年11月には、欧州議会は、新規則の適用時期を遅らせることを含めた修正案を欧州委員会に差し戻している 2 。
現在成立していないとはいえ、デジタル時代におけるVAT提案は興味深い内容を含んでおり、将来の日本の消費税の方向性を示すアイデアを含んでいると考えられる。
2.EUのVATが抱える課題
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