中国・インド 日系企業が直面する国際的な人材活用とその実践的課題 第1回 中国・インドへの人材派遣と税務課題
AsiaWise会計事務所 公認会計士・税理士 高野 一弘
矢野綾佳税理士事務所 税理士 矢野 綾佳
今号より隔月の連載で「中国・インド 日系企業が直面する国際的な人材活用とその実践的課題」がスタートします。本稿は、日本から中国・インドへの“人材派遣”及び両国から日本への“人材受入”に焦点を当てて、どのような税務問題が起こりうるのかについて事例を用いながら解説いただくものです。第1回目となる今回は特集記事としてお届けします。(編集部) |
米中対立やブレグジット、さらにはグローバルサウスの台頭などの事象が象徴するように、世界は多極化が進んでおり、国際関係は以前にも増して複雑で予測が難しい状況にあります。また、地政学的なリスクやサーバーセキュリティー上の脅威も急速に拡大しています。このような新しい時代のグローバル経済を勝ち抜くため、多くの企業が悩みながらも、戦略を練り、それを実行に移しています。このような環境の中で、人事戦略に関しては、従前の日本本社からの一方的な人材派遣だけではなく、双方向さらには子会社間での直接派遣も検討、導入が進んでいます。
本稿では、日系企業にとって極めて重要なアジアの2大巨大市場である中国とインドに焦点をあて、人材派遣/受入という観点から、昨今の具体的な事例を勘案しつつ国際税務上の課題を概観します。
今回は第1回目として、日本法人から中国・インドへの人材派遣とその税務課題に焦点を当てます。
事例
P社(日本企業)は、A事業及びB事業を国内で運営しており、A事業に関しては、...