Web3.0時代に向けた消費課税改革の必要性
聖学院大学大学院 特命教授・税理士 堀江 知洋
1.序論
情報通信技術の進歩は、デジタル経済の拡大を促し、税制に新たな課題をもたらしています。特に、分散型インターネットとも称されるWeb3.0 1 の概念が、消費課税の枠組みに対して根本的な見直しを迫っています。本稿では、令和6年度税制改正におけるプラットフォーム課税の導入と事業者免税点制度の改正を中心に、Web3.0に向けたさらなる税制改正案について考察します。
2.現行消費課税制度におけるプラットフォーム課税の必要性
情報通信技術の急速な発展により、国境を越えたデジタルサービスの提供が可能となり、従来の物理的な商品取引に基づく税制では対応が難しい新たな課題が浮上し、特に、国外事業者が提供するデジタルサービスに対して国内消費税を適切に課税する仕組みが不十分であるという問題がありました。平成27年度税制改正前の制度においては、国境を越えて行われる一定の役務提供について、消費税の課税対象であるか否か(国内取引であるか否か)を、役務の提供に係る事業者等の所在地に着目して判断されていました。このため、通常、役務の提供者が国内事業者である場合には消費税が課税される一方、役務の提供者が国外の事業者である場合には消費税が課税されず、同様のサービスであっても、提供者によって課税関係が異なるという問題が生じていました。こうした国内外の事業者間の競争条件の不均衡を是正する観点から、平成27年10月1日以降、国外の事業者が国境を越えて行う電子書籍・音楽・広告の配信等の電子商取引に、新たに消費税を課すこととされました。しかし、依然として執行上の課題として指摘2されていた「税務当局における捕捉、調査及び徴収の困難性」に対処するため、令和6年度の税制改正でプラットフォーム課税が導入されることとなったのです。本改正は、プラットフォーム運営事業者に納税責任を負わせることで、国外事業者が提供するサービスにも消費税...
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