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世界規模の「法定調書」としてのCRS情報の動向

東京富士大学 客員教授・税理士 伴 忠彦

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1.各国が交換する税務情報の範囲の拡大

国税庁は、申告書の審査や税務調査において、多種多様の資料情報を使っています。特に海外取引に関しては、国内取引に比べて取引先の情報を直接確認しにくいため、資料情報の重要性が高くなります。

その中に、6年前から始まった、100を超える国との間で自動的に交換される「CRS情報」があります。CRS情報とは、日本の納税者(居住者)が外国の銀行や証券会社等の金融機関に持っている金融資産(預金や有価証券等)の残高や、それに伴う受取利子、配当等の額に関する情報です。このような情報は海外取引や海外資産に係る税務調査等で有効性や汎用性が高く、日本を含む各国の税務当局で積極的に活用されています。

【図表1】租税条約に基づく情報交換

要請に基づく情報交換
自発的情報交換
自動的情報交換

課税

情報

CRS情報
法定調書情報
暗号資産取引情報(令9~)

共有

情報

CbCR
GM課税情報申告(令9~)

【図表1】のとおり、CRS情報の交換は租税条約に基づいて行われる情報交換のうち、「自動的情報交換」と呼ばれるものの一つです。この分野では、現在は「暗号資産等の取引情報」を世界各国で自動的に交換する準備が進...