[全文公開] アングル デジタル化の進展と税務
税理士 川田 剛
▶はじめに
最近マスコミで大きく取り上げられているのが、ロレックスなどの高級時計をある期間借り入れ、対価として使用料を払うと称しているビジネスにからむ不正(いわゆるトケマッチ不正事業)である。
同様の事例は、高級車の貸出しや貸株に代表される有価証券の貸出し、さらには東京オリンピックの前に盛り上がったいわゆる民泊等についても生じてくる可能性がある。
それらに共通しているのは、高級品を所有している人達が、自分の所有している資産を有効に機能させることにより利益を生むことができるということである。他方、利用者側からみれば、それらの資産を借り入れて使用することで満足感を得るとともに、みせびらかすことで虚栄心を満足させることができる。
それらの需給関係をつないでいるのが今回問題になったトケマッチに代表されるデジタル仲介業者(いわゆるデジタル・プラットフォーマー)である。
▶デジタル・プラットフォーマー
インターネットの発達に伴いスマートフォンやSNSが普及したことにより、個人や法人が保有する時計やブランド品など活用可能な資産等をインターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の人達の利用が可能になった。
その結果、供給側(資産等の所有者)と需要側(それらの資産利用者)とが、インターネット上のプラットフォーム(いわゆるデジタル・プラットフォーマー)を通じて行う取引が急増してきている。
しかし、それらの取引の主体はあくまで売り手又は資産の供給者と買い手又は資産の利用者であり、プラットフォーマーはそれらの取引の場を提供するのみである。したがって、たとえ取引内容に不備や欠陥等があったとしても仲介者であるプラットフォーマーは責任を負わないというのが原則である。
それにもかかわらず、近年これらの者(プラットフォーマー)に対する関心が高まっているのは、彼らがプラットフォーム上で行われた取引について、契約や決済さらには取引される財貨やサービス等に関する情報を入手し、それらのデータを使って更なるビジネス展開を図ることが可能になっているためである。
▶税との関係
これらの取引は、税務当局にとっても新しい分野のものである。そのため、この分野では、租税回避や脱税が横行し易い雰囲気にある。
この分野で先行している米国では、プラットフォーマーに対し、仲介先等に関する情報(例えば取引に係る代金の支払人及び受取人に関する情報等)を情報申告書(様式1099-K)の形で当局に報告させることとしている。
ちなみに、そこで求められているのは次のような情報である。
① 対価(フィー)
② 使用された支払形態
クレジットカード...会社名及び利用者番号
小切手...番号等
③ 出荷記録(日時等を含む)
④ 割引等
⑤ 返金等があればそれらに関する情報
⑥ 支払者と受取人の住所、氏名、及び納税者識別番号(TIN)等
これらの情報をもとに、IRSでは資産の売り手又は提供者等に対しWeb上で申告が必要である旨(様式1040)及び資本資産の処分であれば様式8949により申請するよう求めている。
さらに、米国(イタリアも同様)では、プラットフォーマーに対し、支払いの際に源泉徴収する義務も課している。
(参考)1099-K(代金受取人用)
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