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[全文公開] 国際税務の英単語 provision(引当金)

佐和公認会計士事務所 公認会計士・税理士 佐和 周

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本連載は、国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものですが、今回も 前回 に引き続き、一般的な税務用語です。

前回 は、会計上の利益( accounting profit )と課税所得( taxable income )との差という文脈で、減価償却( depreciation )という基礎的な用語を扱いましたが、今回は、同様の位置付けで「引当金」について書きます。

まず、「引当金」は provision と訳すことが多いと思われ、この場合の provision には「(将来への)備え」というニュアンスがあります。

次に、セットになる前置詞を考えると、動詞形の provide については、 to provide for ~ で「~に対して準備する」という意味になります。そうすると、 provision for ~ で、「~に対する備え」という意味になり、この表現を使って「~に対する引当金」を表すことができます。例えば、「不良債権」を意味する bad debt を付けて、 provision for bad debt といえば、「貸倒引当金」ということです。

もうひとつ、「引当金」の訳としては allowance もあり、例えば、 allowance for bad debt [credit losses] (貸倒引当金[信用損失引当金])という表現も、会計ではよく見かけるものです。ただ、税務の場面に限定するなら、引当金の訳には provision のほうが適切だと思います。というのも、 allowance には、他に「(課税所得からの)控除」や「(税務上の)損金算入」という意味もあり、誤解を招く可能性があるからです。

なお、動詞形の provide には「~を提供する」という意味がありますが、これに対応して、 provision にも「提供」という意味があります(例えば、 provision of services で、「役務の提供」など)。また、動詞形の provide には「(法律などが)(~と)規定する」という意味もあるように、 provision も「(法律などの)規定」という意味で使うことがあります。いずれも、税務の関係ではよく登場する意味なので、これらもセットで覚えておくとよいでしょう。