東南アジア・オセアニア地域 定点観測 主要7ヶ国における最近の税制改正と執行状況〈下〉 ~2024年度版~
PwC税理士法人 パートナー 神保 真人
PwCインドネシア パートナー 菅原 竜二
Ⅴ インドネシア
PwCインドネシア ディレクター 深澤 直人
マネージャー 石山 洋平
1.はじめに インドネシアの経済環境と財政・税制の状況
インドネシアは世界で第4位、かつ東南アジアで最大の人口を抱えており、今後も人口が増加していくことが見込まれている。こうした人口増加や賃金の上昇を背景にした国内消費の拡大、そして2期10年に及んだジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領による安定した政治体制のもと、コロナ禍の影響を受けた2020年と2021年を除き、在任期間中は安定して概ね5%台のGDP成長率を記録した。近年では、2022年のGDP成長率は5.3%であったのに対し、2023年は国内消費が堅調に推移したが、コモディティ価格の高騰が正常化したことによる輸出額の減少などが影響し、GDP成長率は5.1%とわずかに鈍化する結果となった。そうした中、インドネシア政府は2024年のGDP成長率5.2%を目標に掲げており、直近の2024年4--6月のGDP成長率は5.05%であった。引続き5%台を維持しているが、自動車新車販売が低迷するなど国内消費に懸念があるとされ、下半期の経済状況次第では政府目標未達...