※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

租税条約の理論と現実

  品川 克己

( 54頁)
歴略
1989年より大蔵省主税局に勤務。1990年7月より同国際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及び租税条約交渉等に従事。1996年ハーバード・ロースクールにて客員研究員として日米租税条約について研究。1997年より2000年までOECD租税委員会に主任行政官として出向(在フランス)。2001年9月財務省退官後、大手税理士法人において、租税条約及び移転価格税制、タックスヘイブン対策税制を中心とした国際税務に関連する税務コンサルティングに従事。2018年同税理士法人を退職し、現在は海外進出企業を中心に総合的アドバイス、執筆活動を行っている。

1,国内法制との相違点

(1)租税条約の概要

① 租税条約の基本的概念

租税条約は、国際租税制度の中で一種独特な存在である。企業の税務、経理等の業務に携わる人であっても、あまり馴染みがない世界でもあろう。日常業務において、所得税、法人税、消費税、源泉徴収、インボイスといった税務の世界を十分理解している人であっても実務で関係するケースは少ないかもしれない。しかしながら、昨今、企業間取引をはじめとした経済活動は日本国内だけで完結することは少なく、否応にも国際...