[全文公開] 日本親会社向け海外税務ワンポイント
DLA Piper(ディーエルエイ・パイパー東京パートナーシップ外国法共同事業法律事務所) 税理士・国際税務クリニック院長 山田 晴美
今回から「日本親会社向け海外税務のワンポイント」という表題で、情報発信をしていくことになりました。3か月に1度の発信となりますが、親会社として認識しておくべき論点を簡単にまとめてお伝えします。取り上げて欲しいテーマなどがありましたら、是非リクエストしてみてください。
初回は、インドネシアにおける税務調査期間についてです。
日本の税務調査においては、調査初日にXX週間という具体的な臨場日数が伝えられ、それまでは毎日、その後は状況に応じて対面のヒアリングなどが設定されるという流れが一般的です。調査終了までには数か月から1年、特に移転価格に焦点を当てた調査の場合には、数年かかる場合があります。当初設定した調査期間までに絶対に終了しなければならないということではないため、納税者が納得できない場合にはディスカッションに時間をかけ、終了が予定より延びるケースも多々あります。
このような日本の感覚でインドネシアの税務調査に対応すると、痛い目に合うというのが今回のテーマです。
インドネシアでは前年実績に基づき予定納付・申告を毎月行う必要がありますが、例えば前年より売上が落ちてしまった場合、最終的に還付となります。還付申告については必ず税務調査が行われるのですが、この期間は1年以内となっています。というのも、1年以内に終了しない場合には還付を認めたことになってしまうからです。どこの当局もそうですが、いったん納めてもらった税金はできるだけ還付したくないため、特に東南アジアの国の税務調査では、何とかして(因縁をつけてでも)還付を阻止するために否認事項を積み上げてきます。こうした理不尽な課税を受けないためにも、還付ポジションになりそうな場合には予納の免除制度を使用できないかなどの事前の検討が必須となります。
また、税務調査の中では指摘事項一覧のレターが発行されますが、これについては7日以内に反論する必要があります。ところが現地の担当者がこれを放置して反論期日を徒過し、結果的に指摘を受入れたとみなされ、還付が全く認められなかったケースも多くありました。こうした事態にならないためにも現地子会社との連絡体制を見直してみてはいかがでしょうか。
*参考資料*
経産省:インドネシアの税制概要・進出時の留意点 経産省:各国・地域の税制概要とホットトピックス インドネシア JETRO:インドネシア税制「所得税」詳細 2024年10月21日更新版 |