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[全文公開] 日本親会社向け海外税務ワンポイント

DLA Piper(ディーエルエイ・パイパー東京パートナーシップ外国法共同事業法律事務所) 税理士・国際税務クリニック院長 山田 晴美

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今回は「日本親会社向け海外税務のワンポイント」の第2回として、中国における税務調査の厳格化について情報発信します。3か月に1度の発信となりますが、親会社として認識しておくべき論点を簡単にまとめてお伝えします。

中国における税務調査の厳格化と関税の影響

中国の税務調査環境は近年、複雑さを増し、より厳格なアプローチが取られるようになっています。この背景にはいくつかの要因が複合的に作用しています。

一番大きな要因は中国経済の悪化です。財源不足を補うために外資企業に対する課税を強化し、税収確保に躍起になっています。

中国の税務調査厳格化で特に注目すべき点は「金税四期」システムの導入です。このシステムにより、税務当局はビッグデータと人工知能を活用し、企業の損益状況の詳細を迅速に分析し、課税対象となるものの洗い出しを迅速に進めています。さらに、外国会計事務所に対する監督も強化し、年間の事業計画と報告書の提出を義務付けています。

直近の調査で問題となった項目は、従来から変わらず①出向・出張者に対するPE課税、②利益率の低い外資企業に対する理不尽な移転価格課税などです。

こうした外資企業の税務・会計に対する規則等の厳格化は、中国市場で活躍する多数の日系企業に大きな影響を与えており、理不尽な税務調査や送金規制も今まで以上に増加することが予想されています。それに加えてトランプ関税の影響が大きくのしかかってくることから、中国子会社等の存在意義や商流の見直しを始めている企業も増えてきました。実際に中国拠点の縮小や撤退の事例も多く聞くようになりましたが、当局からの嫌がらせなどもあるため、十分な計画のもと、実施する必要があります。中国に関連会社を持つことのメリット・デメリットを総合的に勘案し、グローバルな視点で対策を講じることが非常に重要になってきています。

*参考資料*

経産省:中国の税制概要・進出時の留意点

経産省:各国・地域の税制概要とホットトピックス 中国

JETRO:中国税制「企業所得税」詳細 2024年11月更新版