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[全文公開] アングル 関税は大好きだが内国税はキライ?

 税理士 川田 剛

( 81頁)

▶はじめに

選挙期間中から公約していたように、4月3日から関税が大幅に引き上げられた(ただし、現在は期限延長中)。目的のひとつとしてあげられていたのが、バランス論である。

すなわち、相手国が高率な関税を課していた場合、米国もそれに対抗して相応の関税を課すというものである。

そして、そこでいう「相手国の関税」には、「関税」以外の商慣行など、いわゆる「非関税障壁」も含まれるとしている。

その結果、例えば日本の関税率は46%になるので、その半分の24%の関税を課すという方針を明らかにしている。そして、関税の執行に必要な人員と予算についても、十分な手当てをするとしている。

他方、内国税及びそれの執行を担当する内国歳入庁(IRS)は逆風にさらされている。

そこで、今回はそれに関する話をしてみたい。

※なお、この記事を書くに当たっては、友人の米国人弁護士から聞いた話も参考にしている。

▶IRSたたき

トランプ大統領は、第1期の大統領選挙期間中、それまで慣例とされてきた過去の税務申告の内容を公表してこなかった。

また、IRSから税務調査を受けていたか否かについても、コメントをしてこなかった。この方針は、今回の選挙期間中も堅持されてきた。

しかし、申告内容の一部がマスコミで報道され、IRSから同人が税務調査を受けていたとの報道もなされたことがある。

その報道に激怒した同大統領は、IRSが税務調査の有無等をマスコミにもらしたのは守秘義務違反に当たるとして、IRSに対し厳しい指示を出したとのことであった。

その結果、真偽のほどは定かではないが、調査の有無をマスコミにもらしたとみられる職員は守秘義務違反の罪で現在刑務所に服役中とのことのようである。

この話からも明らかなように、トランプ大統領は、IRSという組織自体に対し、激しい敵意を有しているようである。

イーロン・マスク氏が就任した「連邦政府効率化担当」の仕事として最初に取り上げられたのは、連邦教育庁の廃止である。

しかし、そのような表面に出ている派手なパフォーマンスの裏で、多くの省庁で大幅に人員削減や組織再編が行われているようである。

その典型例が、全職員(約10万人)の15%相当にあたる1.5万人を超えるIRS職員の大幅な削減のうわさである。

なかでもターゲットとされているのが、IRSの心臓部ともいえる調査担当部門である。

大統領側近の言によれば、それらの人員は、バイデン政権によって増加された人員に等しいということである。公私混同ではないかという批判などを全く無視した今回のやり方が、執行面だけでなく、BEPSなどを含む制度面にも波及することのないよう祈りたいものである。