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トランプ関税と日本企業による移転価格対応(下)

外国法共同事業ジョーンズ・デイ法律事務所 弁護士 井上 康一
 弁護士 大沢 拓
Hotta Liesenberg Saito LLP パートナー 高名 祐治

( 14頁)

7月号掲載

1 はじめに

2 問題の所在

(1)追加関税賦課前の前提事実

(2)追加関税賦課後の状況

(3)価格調整金の支払による対応

(4)4つの税務上のリスク

(5)本稿の検討対象

3 米国における関税制度の概要

(1)米国における関税評価の方法

(2)現実支払価格に基づく取引価格の定義

(3)現実支払価格に基づく関税評価のための要件

(以下本号)

(4)CBPの近時の関税評価の実務

(5)事後的な価格調整と関税上の手続

4 本事例における対応策の検討

(1)米国移転価格税制の観点から

(2)日本の税制の観点から

(3)米国関税評価の観点から

5 おわりに

*トランプ大統領は、7月7日に、各国との関税交渉の期限を7月9日から8月1日に延期する旨の大統領令に署名するとともに、日本を含む14か国に新たな相互関税率を通告した。日本に対して課される税率は、10%から25%に上げることが予定されていたが、政府間交渉の結果、7月22日に、15%の税率とする旨の合意が成立した。 しかし、本稿では、10%の追加関税を前提として事例を設定し、検討を始めているので、以下でもその前提を維持する。

3 米国における関税制度の概要(承前)

(4)CBPの近時の関税評価の実務

(a)コストプラス基準の問題点

先に(3)(b)で述べたとおり、米国の関税評価制度では、独立企業原則の下、販売状況テスト(circumstances of sale test、COS)が適用されており、これに関する判断基準としては、(ⅰ)業界標準基準、(ⅱ)非関連者基準、(ⅲ)コストプラス基準が示されている。このうち、米国税関(Customs and Border Protection、CBP)は、コストプラス基準を最も客観的かつ重視すべき基準として取り扱ってきた経緯がある。実際、移転価格税制上の価格調整金に係る関税還付の可否に関する事前裁定制度(Ruling)の下で、...