[全文公開] 国際税務の英単語 Flow-through Entity(導管会社等)
佐和公認会計士事務所 公認会計士・税理士 佐和 周
本連載は、国際税務でよく使う英語をピックアップして解説していくものですが、今回も 前回 に引き続き、グローバル・ミニマム課税(各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税)に関する用語です。
今回は、「導管会社等」という用語です。
国際最低課税額に対する法人税において、導管会社等とは、会社等に係る収入等の全部がその設立国の租税に関する法令において、当該会社等の構成員の収入等として取り扱われる会社等をいいます(ただし、その設立国以外の国または地域の租税に関する法令において、その国または地域に本店等を有することなどにより、対象租税( Covered Taxes )を課されるものを除きます)。端的にいうなら、パススルーの事業体ということですね。
この「導管会社等」に対応する英語は Flow-through Entity と考えられます。 flow-through も pass-through と同じような意味だと考えれば、語感としては理解しやすいのではないでしょうか。また、国際税務の分野では、 flow-through と同じような意味で、 transparent という表現を用いることもあります。つまり、 flow-through や transparent というと、その事業体自体は課税されないということです。
より正確には、上記の「導管会社等」の定義は、会社等の設立国の税法でパススルー扱いになる場合ですが、(その会社等の)構成員の所在地国の税法でパススルー扱いになる場合にも「導管会社等」に該当します(ただし、いずれかの国または地域の租税に関する法令において、その国または地域に本店等を有することにより、対象租税または自国内最低課税額に係る税( QDMTT )を課されるものなどを除きます)。
ちなみに、モデル・ルールにおいては、 Flow-through Entity (導管会社等)は、 Tax Transparent Entity と Reverse Hybrid Entity に区分され、それぞれ異なる取り扱いとなります。前者は会社等・構成員の所在地国の両方でパススルー扱いとなる事業体、後者は会社等の所在地国のみでパススルー扱いとなる(つまり、構成員の所在地国では法人扱いとなる)事業体をいいます。上記のとおり、一般には flow-through や transparent は同じような意味で使われますが、グローバル・ミニマム課税の文脈では両者を区別する必要があるので、注意が必要です。





