[全文公開] アングル レアメタル備蓄
税理士 川田 剛
▶はじめに
半導体需要の急速な高利益もあって、その製造等に不可欠なレアメタルの不足が表面化してきている。
周知のように、レアメタルは中国など一部の国にその資源が偏在している。しかもその製造に有害な副産物が伴うことなどもあり、産出国であっても自国で製錬するのでなく中国にその大部分を委ねているというのが現状である。
その結果、中国が輸出を規制すれば世界の半導体業界、ひいては産業全体がマヒ状態に陥ってしまう。
そのようなことから、各国ともそのリサイクルに力を入れている。
問題は、需要が低下してリサイクルがとどこおったときに、どのような形でそれらの資源を備蓄するかという点である。
しかし、備蓄にはそれなりのコストがかかる。そこでアイデアのひとつとして浮かんでくるのが例えば造幣局など公的機関による備蓄である。
▶造幣局
造幣局といえば、おカネ(コイン)を作っているところというイメージくらいしかないかも知れない。しかし、その歴史は、わが国近代化の歴史そのものである。
明治政府は、近代国家として、統一貨幣制度の確立を図るため、明治4年、造幣局を大阪に創設した。
当時の日本は、機械力を利用した近代工業が発達していなかったため、貨幣製造に必要な大型機械等は全て輸入に頼らざるを得なかった。また、製造過程で必要とされる硫酸(銀の加工に必要)、ソーダ(洗浄に必要)等といった化学製品も、当初は輸入に頼らざるを得なかった。
貨幣の材料として用いられたのは、当時欧米で用いられていた材料、主として銅の地金だった (注) 。
(注)貨幣の材料としてもうひとつ広範に用いられていたのは金(キン)であった。その典型例が金本位制度である。
ただし、わが国で最初に金貨が発行されたのは明治20年(1887年)と大分後になってからである。
ちなみに、当時西欧諸国で貨幣材料として銅が用いられたのは、戦略物資(弾丸や薬きょう)として銅の備蓄が念頭にあったためである、といわれている。
その後、大砲の砲身にニッケルが加えられることになると、その備蓄のため貨幣にもニッケルが用いられるようになった。さらに、航空材料としてアルミが使われるようになると、アルミも備蓄目的で貨幣として用いられるようになった。
ちなみに、太平洋戦争で鉄や銅が大量に消耗されるようになる戦争末期には、周知のようにそれまでの金属貨幣に代えて陶器でできた陶銭も用いられるようになった(ただし、レアアースではなかった)。
この貨幣は、正式に流通することはなかったが、資源に乏しいわが国が究極的に頼れるのは国産品だけだという意味で参考になる。
レアメタル等の産出量は極めて少なく、それだけに入手の困難性と高コストが最大のネックとなっている。
そこで、古人の知恵に学び、荒唐無稽なアイデアかも知れないが、これらの戦略物資を貨幣材料とし、国内でリサイクルさせ貨幣材料として備蓄する、という考えは如何なものであろうか?




