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税金裁判の動向【今月のポイント】第230回 小規模宅地等の特例の「生計を一にしていた」の意義

 立命館大学法学部教授 望月 爾

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小規模宅地等の特例を適用するためには、相続人が被相続人と「生計を一にしていた」という要件を満たす必要があります。ここで問題になるのが、どのような場合に相続人が被相続人と「生計を一にしていた」といえるかです。実務上は、一般的に所得税法の「生計を一にする」要件の基準が参考にされていますが、具体的な判断が難しい場合も少なくありません。

そこで、今回は、被相続人の成年後見人であった相続人について、「生計を一にしていた」かが争点となった事例を紹介します。

事実の概要

X(原告・控訴人)は、養母であるAの所有する宅地(地積928.92㎡。以下「本件宅地」という。)に建つ作業場(以下「本件建物」という。)で、父(...