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税金裁判の動向【今月のポイント】第241回 取引相場のない自己株式の取得に対する課税

名城大学法学部 教授 伊川 正樹

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同族株主が保有する株式を会社が取得し、さらにそれを他の同族株主に移転するということはしばしば行われます。一般的にこうした取引は資本等取引と考えられ、みなし配当を除き課税関係は生じないと考えられていますが、みなし譲渡所得課税及び給与所得課税が問題となった事案が登場しました。

今回はこの事案をみていきましょう。

事案の概要

X社は、土木、建築工事請負業等を目的として昭和36年に設立された株式会社です。Aは、X社設立以来、同社の代表取締役を務めていました。また、Aの長男であるBは、平成12年以降、X社の監査役を務めた後、平成18年12月以降、同社の取締役を務めていました(平成27年に代表取締役に就任)。

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